「ここでしか読めない記事」こそが
Web時代の生き残りのカギに

 それに似た試みは、じつはすでに実施されている。女優の佐々木希さんが昨年11月に、秋田魁新報社の「秋田の魅力発信」編集長に就任したことだ。県内各地を訪ねて魅力を伝える役割を担うのだという。ちなみに佐々木さんは秋田県出身者であり、単に東京の女優を客引きのために呼ぶのとは異なる意図が、この企画には込められている。

「佐々木さんの編集長企画は非常に興味深い試みです。秋田県人である佐々木さんが、地域を元気にするために頑張っている『人』を取材すれば、県民意識も手伝って地域の人によるシェアもますます盛んになるでしょうし、全国的な知名度からも、記事が県外に拡散しやすくなると思います」(高橋氏)

 高橋氏のアイデアを言い換えると、地方新聞という立場を逆手に取り、地域への綿密な取材に基づいて「ここでしか読めない記事」を発信することで、有料でも読みたい読者を県外に求めるということになるのではないか。

 旧来の新聞社のスタイルを守るだけでは、そういった独自記事で連続ヒットを出し続けることは難しいだろう。しかし将来、紙版の新聞が仮になくなる日が来るにしても、Webを上手に使って記事が県外に拡散しやすい体制を整えて、独自取材記事の魅力をアピールできれば、有料購読パッケージの目玉となる。こうして生き残ることはできるのではないか?

「ここでしか読めない記事」という強みは、地方新聞だけでなく、ある分野に抜きん出た強みを持つ雑誌に当てはめることもできるものだ。そのあたりに、中小メディアがWeb時代に生き残るためのヒントがあるのかもしれない。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R))