治雄が看護師にただそうとすると、看護師は謝りもせずに、こう冷たく言い返すのです。

「暴れたんですよ。おたくでも持て余していたんでしょう。こうするしかないんです」

 結局、治雄は独断で冬吉を退院させ、桂子や子どもたちと一緒に冬吉を島根県に連れて帰るのですが、詳細はDVDでご覧いただくとして、『花いちもんめ』の描写を通じて、(1)高齢者介護がもたらす家族、特に女性に対する負担、(2)在宅介護が困難だと病院しか選択肢がない状況、(3)受け入れ先の老人病院が人権を無視──。そうした社会事象が描かれていることに気づきます。

三國連太郎と佐藤浩市の共演映画
テーマは「介護殺人」

 実は、この3点については、三國連太郎と佐藤浩市の親子が共演を果たした1986年製作の『人間の約束』にも共通しています。

 舞台は、東京都多摩地区のベッドタウン。主人公の森本亮作(三國連太郎)は妻、タツ(村瀬幸子)とともに東北地方から上京し、会社勤めの依志男(河原崎長一郎)、専業主婦の律子(佐藤オリエ)の夫妻、その息子の鷹男(杉本哲太)と娘の直子(武田久美子)と三世代同居するようになります。

 しかし、タツに認知症の傾向が現われるようになります。夜中に町を歩いて警察に保護されたり、亮作の朝ご飯をつまみ食いしたり、トイレに行かせようとする律子を「鬼!」となじったりするようになり、律子に介護の負担がのしかかります。

 そこで亮作は、タツを病院に送ることを決めます。タツが入院した日、仕事で病院に来るのが遅れた依志男と、病院に先に到着していた律子との会話です。

依志男 「またどうして病院なんかに入れる気になったんだ」
律子  「(おじいちゃんが)私に悪いっていうのよ」(略)「下の面倒まで見させるの忍びないって」

 20〜30秒ほどの短いシーンですが、先に触れた3点のうち、(1)の「女性の介護負担」と(2)の「自宅介護がダメだと病院」の2点が凝縮されています。