金融業界にとって最も恐ろしい本が現れた。そのタイトルは『年金15万円のゴージャス生活』(中町敏矢著、ぱる出版)。
著者は関西で経理マンとして定年までサラリーマンを勤め上げた方だが、ご夫婦で月15万円の年金で暮らし、この中から毎月1万円を貯金しているという。
詳しくは、この本を読んでほしいが、著者夫婦は、毎月、家賃3万5000円の市営住宅に住み、毎月の食費が4万5000円、被服費7000円、通信費8000円といった生活をされていて、趣味として英会話(頭の体操にいいらしい)を習い、近隣住民に開放されている大学や市役所の食堂や図書館などを有効に活用し、普通の現役サラリーマンよりもよほど文化的で健康的な生活を営んでおられる。年金をはじめとする各種制度の賢い使い方や、いざというときにどうしたらいいかについては、かつての経理マンらしい几帳面さで対策が書かれているから、15万円という金額に納得しない方にも一読の価値がある。
15万円で足りるか足りないかは地域や生活スタイルによるだろうし、年金を受け取るのが10年以上先の人は、実質的な年金の受取額自体をかなり割り引いて見込む必要があるだろうが、年金で20万円くらいの収入を見込むことができる方は少なくあるまい。もちろん物価も生活スタイルも違うわけだが、学生時代の生活を振り返ると、学費さえなければ、毎月20万円もあれば、まあまあの生活が送れたのではないか。
企業年金が手厚い会社に勤めるサラリーマンや公務員などは毎月もっと多額の年金収入を見込むことができるはずだ。