TPPの事前協議と在日米軍再編の調整
日米関係を左右する2つの協議プロセス
日米間で重要な協議が始まった。1つには在日米軍再編ロードマップの調整であり、1つにはTPPを巡る日米事前協議である。今後の日米関係を大きく左右するだけではなく、この地域の将来にとって大きな意味を持つ2つの協議プロセスの開始と捉えなければならない。
安全保障と経済という異なる分野の協議であるが、その本質は急速に台頭を続ける中国にどのように向き合っていくのかという戦略的課題に答えるものである。単に「沖縄の負担軽減か否か」とか「農業の自由化か否か」というだけのコンテクストで捉えてはならない。
沖縄も農業も重要な課題であることは論を待たないが、それを踏まえつつ、中長期的なアジア太平洋の安定した秩序を構築するために日米がどう協力するのか、ということを考えなければならない。
在日米軍再編ロードマップの調整は、いささか唐突に始まった。日米の協議自体は少し前から行なわれていた様子であるが、発表のタイミングはもっぱら米国大統領予算教書の発表に間に合わせるという事情で急がれたのであろう。
発表の肝となるのは、普天間の移設と在沖海兵隊8000名のグアム移転のパッケージを日米の合意で切り離したことである。すなわち従来は、海兵隊のグアム移転は沖縄の負担軽減に繋がることは間違いなく、沖縄が歓迎することであるから、普天間移設とパッケージにすることで普天間移設を容易にするという考慮があったのだろう。
それが、米国の東アジア戦略の変更並びに議会からの予算の締め付けにより、計画変更に至った。普天間は動きそうにないので、いつまでもパッケージにして待つわけにはいかない。
東アジア戦略の変更では、中国の軍事活動、とりわけ海洋活動の活発化に伴い、米軍兵力を分散化することが中心的課題となった。基本的には海兵隊の戦力を沖縄に集中するのではなく、グアム、豪州、東南アジア、ハワイ、米本土に分散化するのが賢明と判断するに至ったのであろう。