衆院予算委員会で答弁に臨む高市早苗首相=11月10日、国会内で衆院予算委員会で答弁に臨む高市早苗首相=11月10日、国会内で Photo:SANKEI

対中関税削減やレアアース規制猶予で合意
高市首相発言で日中は険悪化の懸念

 韓国・釜山で10月30日に行われたトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談では、米国が合成麻薬対策の不備を理由に中国に課していた20%の追加関税のうち10%分を削減する一方で、中国も「トランプ関税」への報復措置として表明していたレアアースの輸出規制強化の施行を1年延長するなどで合意。米中の貿易戦争は「1年間休戦」で折り合ったように見える。

 来年4月にトランプ大統領の訪中、その後に習国家主席が訪米することでも合意されており、少なくとも2026年の米国中間選挙までは頻繁に協議が行われるだろうし、その間、両国関係は安定すると思われる。

 だが、恒久的な合意ではない。いつでも貿易戦争は火を噴く可能性はあるが、さらに台湾問題という米中の大きな火種は残ったままだ。

 今後の米中関係の推移を見通す上では台湾問題の展開が鍵となるが、折しも、高市早苗首相が国会で台湾有事に関連して日本にとって「存立危機事態になり得る」と発言、日中関係も険悪化が懸念される事態だ。

 中国の駐大阪総領事が、外交官らしからぬ過激な言葉で反論したこともあって、双方が発言の取り消しを求め合い、中国政府が中国国民に日本への渡航の当面自粛を呼びかけることにもなっている。

 米中の貿易戦争は当面休戦となっても、台湾問題が今後、日中を含め、米中関係や世界の不安定化の鍵になりそうな状況だ。