国内化粧品メーカー大手の資生堂は、世界85ヵ国に事業を展開しており、2014年までにグローバル企業に成長することを目標に掲げる。こうした戦略をけん引する施策として現在取り組んでいるのが、グローバルでのITシステム統合だ。それまで主に国内のITを中心に見てきた情報企画部が、グローバルなIT戦略を担っている。情報企画部長としてグローバルIT戦略を推進してきた提箸眞賜氏に聞いた。

「グローバル企業」への脱皮目指し、
ITのグローバル標準化を推進

――資生堂ではここ数年、グローバルでのIT整備に取り組んでいます。どういった意図によるものでしょうか?

さげはし・まさし/株式会社資生堂 情報企画部長。1954年生まれ。77年資生堂入社。鎌倉工場で、生産技術開発、生産管理、原価管理などに約8年間従事した後、本社情報システム部門で生産管理システムの企画・開発を担当。1989年から10年間米国に駐在し、北米の販売・物流システム、生産管理システムの再構築プロジェクトやSCM改革のプロジェクトリーダーを務める。帰国後、経営企画部で生産、物流機能の構造改革などを推進。2008年4月から現職。

 まず、海外売上げの比率が大幅に上がっていることがあります。たとえば2001年の海外売上げ比率はわずか18%でしたが、2011年には43%にまで上がっています。経営戦略でも、海外事業の強化を大きな柱にしています。2008年に策定した中期経営計画では、10年後に目指す姿を「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」と定め、売上高1兆円超、営業利益率12%以上のコンスタントな確保を目標としました。これを実現し、経営の質を高めるための経営基盤を構築する重要なツールとして、グローバルITの強化を掲げたのです。

 売上高を上げるためには、既存事業の成長に加え、積極的なM&A戦略や新規市場への進出が必要です。そして営業利益率向上のためには、グローバルでオペレーション効率を上げる必要がある。この2つの実現には、グローバルで標準化されたシステムの導入が欠かせません。

 化粧品というのはブランド認知が大切なので、海外で新しい市場に進出するとまずマーケティング投資を行います。IT投資の優先順位は相対的に低くなるので、できるだけ小さいシステムでスタートすることになる。このため、国ごとに部分最適を追求したシステムが乱立してしまいました。しかしそれぞれの市場が成長し、対応しきれなくなっています。海外事業のさらなる成長を考えると、標準化と統合が避けられない状況になってきたのです。

――先行して、日本国内で新規システムを導入されていますね。

 まず日本国内で2006年から、ERPパッケージを導入するプロジェクトを開始し、2008年に運用を開始しました。実はそれまで資生堂では国内でパッケージを使ったことがなく、すべて手作りしていたので、大きな方向転換でした。グローバルで標準化と統合を行うにはまず、パッケージに合わせてプロセスを標準化するという作業が避けて通れません。