些細な間違いを指摘したら
部長が豹変した!
ある中小企業での話だ。ある嘱託職員が、そこで働いていた。彼女の仕事は、外勤の営業だった。営業といっても、何か商品を売るわけではなく、クライアントにインタビューをし、その報告書をまとめ、会社広報誌を作成する仕事だ。クライアントが外国人の場合もあるので、英語―日本語の翻訳や通訳も必要になることがある。
彼女を採用したのは、専務だった。小さな会社なので専務が営業部門の責任者で、いわば部長兼専務というような役割をしていた。
英語を使って米国で働いた経験もある彼女は、家庭の事情で仕事を辞めて、子どもの世話をしつつ働ける環境を探していた。自分の特性を活かしてできる嘱託の仕事は、給料は低いが、それなりにやりがいのあるものだったという。
何より、クライアントのインタビューという業務が、彼女にとっては新鮮で楽しく、それを報告書にまとめるのにも気合が入った。
ある日、彼女は報告書のゲラ刷りを見ていて、間違いを見つけた。あるイベントの日時が違っているのだ。その報告書は部長が書いたものだった。シンプルな間違いだったので、彼女はメールで部長に「誤植を見つけましたので、訂正をお願いします」と書いた。
部長の彼女に対する態度が大きく変わったのは、その後だった。明らかに間違っている数字について「そんなことはわかっている。余計な口を出すな」、「今後俺の文書についてごちゃごちゃ言うな」と強い口調で彼女に言った。