離れて暮らす親の認知症は”事件”がないと気づけない

ストーリー2については、離れて暮らすひとり親が認知症かもしれないというケースです。

認知症という病気は、専門家でないとなかなかただの物忘れと見分けがつきません。家族は「そうじゃない」と信じたいし、本人だって子どもに迷惑をかけたくないから「大丈夫」と言ってしまう。でも、その「大丈夫」という言葉を鵜呑みにしていると、いつの間にか病気が進行して、ある日、道に迷って初めて気づくことになります。

ポイントは、認知症の多くは急に判明することはあっても、急になるものではないということです。認知症は、脳内で徐々に進行しているものの、目に見える症状として現れるのはある日突然というケースが多いのです。裏を返せば、認知症を「ある日突然」にしないために備えることもできます。

本来なら交番に保護される手前で、「いままでできていたことができなくなる」という予兆があります。たとえば、トイレットペーパーやシャンプーを切らしてしまう、同じ話を何度も繰り返してしまうといった小さな変化に気づくことで備えることができます。

しかし、離れて暮らしていると、どうしても気づくのが遅れてしまいますよね。だからこそ、ご近所の方や地域包括支援センターの担当者などに、あらかじめ「なにかあったらいつでも電話してください」とお願いしておくことが、実はすごく大切です。

ただ、現実にこういうケースが起きる可能性は否定できません。ストーリー2のように警察から電話があったら、まずはあわてず、数日休みをとって帰省しましょう。夜中に電話があっても、すぐに駆けつけるわけにはいかないですからね。
ひとまず警察の方にお願いして、実家に送り届けてもらうか、そのまま保護してもらって、翌日あるいは次に休みが取れたタイミングで実家まで行くことになります。「会社には知られたくないなあ」という方は、有給休暇を取得して行くことになりますが、法律で決まった「介護休暇」の取得をお勧めします。

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問題は帰省後です。そのまま親を放置しておくのも心配だけど、いきなり親を自分のところに呼び寄せるのも現実的ではありません。
では施設に入れるか? そうは言っても、初めてのことでどうしていいかわからない。兄弟姉妹がいる人なら、手分けして実家に通うということも考えられます。しかし、仕事をしながら通い続けるのは大変です。1年くらいならできるかもしれませんが、この先何年もそれが続くことを考えるとどうでしょう。自分たちで全部面倒を見るのは、かなり難しいはずです。

大事なのは、とにかくいろいろな人に頼り、任せること。私がお伝えしたいのは、基本的には介護の「やり方」ではなく「任せ方」です。ではこの場合、最初に頼るべき相手は誰でしょう。ここでもやはり、地域包括支援センターに連絡し、相談することになります。