北極の温暖化は
なぜ起こっているのか

 ではこの北極の温暖化はなぜ起こっているのだろうか。「そりゃあ、二酸化炭素排出量の上昇による温暖化だろう」と安直に思い込みがちだが、最新の研究によるとどうやらそれだけではないようだ。二酸化炭素の数十倍以上の温室効果があると言われるメタンガスの放出というより深刻な問題が指摘されている。

 北極の海氷は2005年頃より溶け始めているが、時を同じくして北極海大陸棚海底の永久凍土も溶け始めている。永久凍土は数万年間メタンハイドレートを地中にとどめる蓋の役割を果たしていたが、この蓋が溶けたことによって、現在では大量のメタンガスが海底から大量に放出されているのだ。本書『北極がなくなる日』の口絵には、気泡ブルーム状のメタンガスが海底から噴出している異様な写真が載っており、まるで地球が怒っているかのようなぞっとする光景である。

 かつては800平方キロメートルあった夏期の北極海水は、いまやその半分以下へと面積が縮小し、厚さもどんどんと薄まった。「ティッピング・ポイントをすでに超えてしまった」と著者は評価する。40年以上に亘って極地の海氷量の変化を計測・観測してきた第一人者の言葉は重く読み手に突き刺さってくる。