「地球温暖化の原因は、CO2だけではない。フロン対策に力をいれるべきだ――」
こう警鐘をならすのは、環境省環境経済課長を務め、現在は函館税関長の笠井俊彦氏だ。
COP21がパリで開幕し、気候変動の原因となる温室効果ガス排出削減の新たな枠組み合意へ向けて協議が始まった。だが、ここでフォーカスされる温室効果ガスは主にCO2だ。CO2よりも高い温室効果があるフロンガスについて、もっと議論されるべきだというのが笠井氏の主張だ。
フロンガスは主に冷蔵・冷凍機器、空調機器などの冷媒として使用されている。1980年代初頭に、オゾン層を破壊する元凶として広く知られるようになった。
だが、フロンガスの種類によっては、温室効果がCO2の1万倍にも及ぶガスであるということは、世界ではそれほど認識されていない。
日本ではフロンガスの回収が法律で定められている。ところが、新興国では、日本のような法もなければ、空調機器などからフロンを抜き取り、処理するという仕組みなど皆無。つまり、ダダ漏れ状態で、効果的な対策は何らされていないのだ。笠井氏が警鐘を鳴らす理由はここにある。
実際、2005年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが出した報告書では、世界全体でフロンはCO2に換算して年間20~25億トン放出されているという衝撃的な内容を公表している。日本の2014年度の温室効果ガス排出量のうち、CO2排出量は12億6600万トン。実に2倍以上の規模になるのだ。
さらに悪いことに、このフロンは今後、さらに大量に漏れ続ける可能性がある。
1987年に採択された「モントリオール議定書」で、「特定フロン」と呼ばれるオゾン層破壊の影響が大きく、温室効果も高いフロンが規制された。今は、「代替フロン」と呼ばれるオゾン層を破壊しないフロンを使った新しい機器へのリプレースが進められている。