CO2排出削減で大きな期待
世界が注目の「CCS」とは?

苫小牧CCS実証プロジェクトのプラント。3本の塔がCO2分離回収設備 Photo:日本CCS調査

 2016年4月、注目の取り組みがスタートする。北海道・苫小牧市で行われる、「CCS」の実証試験である。

 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収貯留)は、工場や発電所などから発生する二酸化炭素(CO2)を分離回収し、地下や海底下に封じ込める技術。地球温暖化対策の“切り札”として期待されている。原理的には、排出されるCO2をゼロにする、あるいはのみならずマイナスにする(つまりは大気中のCO2量を減らす)ことすら可能だ。

 地球温暖化・気候変動への対応は待ったなしである。2009年、「第15回気候変動枠組条約締約国会議」(COP15)で、世界の気温上昇を産業革命前に比べ2度以内に抑えることが国際的な目標とされた。さらに2014年に発表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第5次報告書で、“2度目標”の達成は“温室効果ガス排出量を2010年比で2050年までに40~70%削減することを意味する”とされ、今年6月のG7サミットでは、その上限(70%削減)があらためて世界の“共通のビジョン”として宣言された。

 IPCCの報告書で、CCSは地球温暖化対策の鍵となる技術として、大きな位置付けを与えられている。国際エネルギー機関(IEA)の分析では、CCSが2050年までのCO2削減量全体の14%を担う。とりわけ、世界のCO2排出量の約4割を占める電力や、約1割を占める産業部門での削減に果たす期待が大きい。言い換えれば、地球温暖化対策において、CCSは“不可欠”な技術とされているのだ。

 わが国も、温室効果ガスを2030年度までに2013年度比で26%削減(*1)、2050年までに80%排出削減(*2)することを目指すとし、やはりCCSがその重要な手段とされている。政府は「2020年頃までのCCS技術の実用化」を目指すとしており、苫小牧のプロジェクトはその重要なステップとなる。

 現在、世界には55件の大規模CCSプロジェクト(*3)が存在し、うち14件が既に操業段階にある。地球温暖化防止を目的としたCCSの開発研究が国際的に始まったのは1990年代初頭、重要な課題と認識されたのは2000年代半ばである。日本での研究は1990年代前半には始まっており、これは世界でも早かった。一方で、その後いくつかの取り組みはあったものの、大規模プロジェクトの実施では欧米に後れを取った。

 だが2012年、苫小牧の実証試験プロジェクトがスタート。今年10月には設備の建設が終了し、来年4月から18年までの3年間、いよいよCO2の“封じ込め”を行う。設備稼働確認のための試験はこの11月にも始まる見込みだ。

(*1)「日本の約束草案」(2015年7月地球温暖化対策推進本部決定)
(*2)「第4次環境基本計画」(2012年4月閣議決定)
(*3)2015年時点。石炭火力の場合は80万トン、ガス火力・産業プラントの場合は40万トン以上のCO2回収量となるプロジェクト。グローバルCCSインスティテュート(GCCSI)の資料による