経営コンサルティング会社のA.T. カーニーは、世界初の「高齢化する消費者に関するグローバル調査」の結果を発表した。この内容は、先進国の中で最も急速に高齢化が進み、2011年にシニア世代(60歳以上)の消費支出が個人消費全体の44%に達した日本においても十分に示唆に富んだものになっている。
高齢者に不便な売場になっていないか?
今回のA・T・カーニーの調査は、日米中ロなど23ヵ国約3000人の60歳以上を対象に実施されたもの。回答の半数が、ハイパーマーケット、ショッピングモール、スーパーマーケット、路上マーケット、小規模店での直接の対面調査によるものだ(残りは同社のウェブサイトを通じたオンライン調査)。
この調査により、過去に例を見ない人口動態の大きな地殻変動「エージクエーク」が示され、21世紀に最も急増する年齢層は60歳以上ということが明らかとなった。そして耳を傾けるべき最も重要な結果として「高齢の買い物客はマーケティング担当者、小売業、メーカーから十分な関心を持ってもらっていないと感じている」点が挙げられている。
「大規模店の店舗案内は不十分でわかりにくい」「多くの商品が高い棚か低い棚に置かれており取りづらい」「商品の包装が丁寧すぎて開封に手こずる」「メガネを使っても(細かすぎて)商品のラベルや説明書きがきちんと読めない」といったコメント、大部分の店舗で店員が不足しているばかりか、高齢者が必要と考えているサポートができるような教育や訓練が十分になされていないという声もある。
これまで流通小売業が必死になって取り組んできた課題は「買い物客の効率改善」だった。つまり、仕事や育児に忙しい人に対して、できるだけ早くすべての買い物がすませられるような利便性を提供することであり、郊外立地の大規模店舗、広大な駐車場、レジでのスピーディな対応等はそのための手段でもあった。しかし、60歳以上の高齢者が消費市場のメーンプレーヤーの役割を担う今世紀は、大きく様変わりをせざるを得ない。