市場を不安定にすることなく
正常化を進める難しい舵取り

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は15年12月から金利の引き上げ(利上げ)を始めており、今年中に追加で3回程度、さらに利上げすることが確実視されています。

 ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)も、19年から利上げを始めると見ています。欧米が金融の正常化を着々と進めている中で、日銀の長期金利目標はゼロ%のまま、出口戦略は見通せない状況にあります。

 つまり日銀は、市場を不安定にすることなく、「異次元の金融緩和」を解除しなければならないという、極めて難しい舵取りが求められることになっています。特に、ETFの買入減額は、株式市場に大きなインパクトを与える可能性があり、市場との円滑な対話が不可欠です。

 では、新人事案を受けて市場はどのように反応したのでしょうか。

 昨年から、市場の一部で日銀の新体制発足を機に、今後の政策正常化に向けた道筋を示すのではないかとの見方があり、市場が安定するのではないかという予測がありました。しかし、現実にはそうなりませんでした。市場は現在、米国の長期金利が上昇しているにもかかわらず、円高が進み、株価も不安定な動きをしています。

 ただ、今回の人事案発表時の市場の反応を見ると、黒田総裁の再任は“想定内”であって、大きな反応はありませんでした。それどころか、物価目標の2%達成など現行の異次元の金融緩和が継続される公算が強まり、市場には安心感が出ていました。

 今後、日銀の方針と欧米との方向性の違いが一段と鮮明になり、欧米との金利差が拡大し、市場が落ち着きを取り戻せば、円安要因になるとみられます。このように総裁、副総裁人事で金融政策の先行きを見通しやすくなり、株式市場には「買い」への安心感が広がりそうです。