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元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」

ソーシャルが生み出す、これからのビジネス、
マーケティング、クリエイション

対談●ITジャーナリスト・イケダハヤト×河尻亨一

河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]
【第3回】 2012年2月21日
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 対談のポイントを整理しておこう。

  (1)“ソーシャル”には二つの意味がある

 第1回でも言及したが、ソーシャルメディアの「ソーシャル」には「社交(つながり)」と「社会(貢献)」の二つの意味が含まれている。「貢献」とまで言ってしまうと大げさな気もするが、ソーシャルメディアの運用においては、「コミュニティをよい方向にもっていこう」という意識が不可欠と言えそうだ。

 筆者がイケダさんたちの世代に接するたびに感じるのだが、彼らのマインドにはこの「コミュニティ意識」がごく自然に宿っていることが多い。自分の範囲でやれる「世の中のため」を無理せず淡々と行っている、という印象だ。ゆえに企業や組織が彼らとコミュニケーションするのであれば、運営側にもそのスタンスが求められることになるだろう。

(2)“ソーシャル”はリアルに向かう

 ソーシャルのつながりはバーチャルな人間関係に留まらず、リアル空間への関与やそこでの“アウトプット”が求められる傾向にある。イケダさんが挙げていた「greenz.jp」などの活動は20~30代を中心にいま大変人気があるが、イベントやスクールを実施するなど、この“アウトプット”にいたるフローデザインが巧みだ。

(3)さまざまな要素が「権限委譲」されていく

 よく言われるように、ソーシャルネットワーキングを担保するのはフラットな関係性である。ゆえに「権限」は分散する(せざるをえない)傾向にある。ここが従来型(垂直型)のメディア発想やマーケティング思考、クリエイティブ様式と根本的に違う部分で、失敗は“その勘違い”から生じるケースが多い。

 第2回で論じた「アンチ・ステマ現象」や炎上事例の多くも、大きくはこの価値ギャップ(コミュニティ倫理の違反)に根っこがあるのでは? と筆者は見ている。

 もちろんパーフェクトなフラットなどこの世にありえない。イケダさんも指摘していたようにコミュニティは閉じる傾向にもある。ゆえにユーザーを信じて大きく権限委譲しながらも手綱は握ること(オープンなリーダーシップ)が求められる。

 ひと言で言うほど簡単なことでもないが、現在のマーケティングやクリエイティブの解答が垂直(メディア的情報環境)と水平(ネットワーキング的情報環境)の交わるゾーンにあるということはほぼ間違いない。そこに対する一つのアプローチが「プラットフォーム」(バーチャルであれリアルであれ)というものであり、このビジネストライアルは依然大きな可能性を秘めている。

 一方、世の中全体を俯瞰すれば、「公共の崩壊」という言葉で言い表されていた“社会のほころび”や“すきま”は、多くの識者も指摘するように今後一層拡大する可能性がある。だが、それをただ嘆くのではなく、ソリューションの意志をもってポジティブに捉えたい。

 なぜなら“すきま”は起業家やマーケッター、表現者たちにとってのフロンティアにもなりうるからだ。

 そこへの人材として、今バズワードとなっている「ノマド」(的なる生き方と価値観)が適しているのであれば、これは新しい社会的機能になる可能性もある。そこに“市場”も生まれるだろう。流行を強引に加速させる必要はないが、流れに棹さすのはもったいない気もする。ゆえに私は個々人を見た上でそういった人たちを応援したい。

 組織のなかで「仕事をする人材」だけでなく、社会を外からウオッチして「仕事そのものをクリエイトできる人材」は今後ますますその価値を高めるだろう。いずれにせよ、今必要なのは「発想の転換」と「時代にタックルする心意気」である。

photo gingalighter
■Information

河尻氏登壇 広告・ソーシャルメディアに関するセッションの動画はこちら

http://new.livestream.com/smwtokyo/socialmediastema

河尻氏の参加するリレーブログはこちら
http://ayablog.jp/

河尻氏Twitterアカウントはこちら @kawajiring


 

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河尻亨一
[元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。

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元「広告批評」編集長・河尻亨一氏が、ヒット商品、イケてる人や企業、話題の現象……などなど、「ヒト・モノ・コト」にまつわる旬のテーマをマーケティングの視点から読み解く時代批評です。

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