◆なぜ「5kg痩せたい」と願う客は挫折するのか? 一流トレーナーが教える、目標達成の“本当のスイッチ”
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンク「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

「売上目標」を連呼する上司は二流? 部下を“数字の奴隷”から解放する「たった一つの問いかけ」Photo: Adobe Stock

部下の「やる気」に火をつける、たった一つの問いかけ技術

管理職の皆さん、部下との面談でこんな経験はありませんか?

上司「今月の目標は契約件数10件です」
部下「わかりました、頑張ります」

部下はそう答えるものの、どこか表情が晴れない。あるいは、言われた数字を追いかけるだけの「やらされ仕事」になってしまっている……もし、部下のモチベーションが上がらないと感じているなら、それは目標の「高さ」ではなく、「深さ」が足りないのかもしれません。

今回は、あるトップトレーナーの実話から、部下の本心に火をつける「チャンクアップ」という技術についてお話しします。

「5kg痩せたい」の奥にある“本当の願い”

ある男性が、同窓会に向けてジムに通う決意をしました。彼はトレーナーに「5kg痩せたい」と告げます。普通のトレーナーなら、「わかりました、ではこのメニューをやりましょう」とすぐに具体的な運動を指導するでしょう。しかし、そのトップトレーナーは違いました。彼女はこう問いかけたのです。

「5kg痩せたら、何かいいことがあるんですか?」

男性は、こう答えました。
「7年前に買った高級ブランドのスーツを着て、同窓会に行きたいんです」

トレーナーはさらに深掘りします。
「そのスーツを着ていくことで、あなたにとってどんないいことがあるんですか?」

そこで初めて、男性は本音を漏らしました。
「実は、初恋の人が来るんです。彼女に、かっこいいと思われたいんです」

ここで起きたのが、思考の「チャンクアップ(抽象度を上げる)」です。「5kg痩せる(手段)」という具体的な目標から、「初恋の人に好印象を与える(目的)」という本質的なゴールへと視点が引き上げられたのです。

数字の奴隷にするか、物語の主人公にするか

このエピソードは、ビジネスの現場でもまったく同じことが言えます。例えば、「売上100万円」という目標。これ自体は単なる数字であり、手段にすぎません。部下がこの数字に疲れを感じている時、上司であるあなたがすべきなのは、「もっと頑張れ」とハッパをかけることではありません。

「この100万円を達成することで、顧客にはどんな変化が起きるだろう?」
「このプロジェクトが成功したら、君のキャリアにとってどんないいことがある?」

このように問いかけ、目標の抽象度を上げてみてください(チャンクアップ)。すると部下は、「数字の達成」ではなく、「顧客の課題解決」や「自身の成長」「チームへの貢献」という、自分にとって意味のあるストーリー(本質的な目的)を見出すことができます。

人は、他人に決められた数字のためには頑張れませんが、自分で見つけた「意味」のためなら、驚くほどの力を発揮します。次の1on1では、ぜひ「それを達成すると、どんないいことがある?」と問いかけてみてください。その一言が、部下の目の色を変えるスイッチになるはずです。

※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。