五輪に向けて政府が後押しも
まだ9割が「ヤミ民泊」の現状
大阪市東成区の民泊用マンションにアメリカ人男性と入ったまま行方不明になった女性が、遺体で発見される事件が起きた。身元のわからない不特定多数の人々が出入りする施設であるから、起こるべくして起きた事件と言える。
2020年の東京五輪に向けて、政府が民泊の拡大を推進しようとしている。だからといって誤解している人も多いだろうが、現時点で流行している民泊の9割は違法な「ヤミ民泊」だ。
なにしろ、民泊が解禁される新しい住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が施行されるのは今年の6月15日からだ。東京都大田区や大阪府のように国家戦略特区として先行している一部の地域か、ないしは旅館業の許可をとって行われている民泊以外は、現時点ではほとんどが違法なのである。
民泊ブームのなか、民泊件数は全国で4万5000件を超え、外国人旅行客の7人に1人が民泊を利用するまでになった。訪日外国人の人数が年間2800万人に上ることを考えると、これは民泊需要がものすごい産業規模になっていることを意味している。
十分な法整備を待たずして拡大する民泊の課題は、どこにあるのだろう。今回はミクロの視点で、私が実際に体験した2つのエピソードから、民泊の問題点を提起してみたい。
【問題点1】
ヤミ民泊オーナーへの勧誘が跋扈
実は、私は「民泊オーナーにならないか」と勧誘を受けたことがある。不動産仲介会社から持ちかけられたビジネスの話だ。そもそも私は、自分が経営する会社でいくつか投資用不動産を購入していて、それぞれ(民泊ではなく)賃貸に出している。
仲介会社によれば、「賃貸に出すよりも民泊にすればずっと儲かる。だから銀行から借り入れをして事業規模を拡大しないか」というのである。話は聞いたが私自身のポリシーに反することから、その話はお断りした。その仕組みを紹介すると、こういうことである。