サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタリスト、Scrum Ventures 創業者兼ジェネラルパートナーの宮田拓弥氏を迎えての対談の後編です。AI時代に突入し、今後企業間の競争は一層激化し、また産業構造も大きく変わることが予想されます。日本企業の強みや仕事のあり方がどう変わっていくのか、そしてこのイノベーションの時代にわたしたちはどのように生きればいいのかについて、激論を交わしました。
日本はAIやテクノロジーは厳しいが
リアルでのサービスの質は強み
平井 さきほどのお話(前編)では、日本企業がやはりまだまだデジタルイノベーションの時代に正面から立ち向かいきれていないということが浮き彫りになりましたが、逆に日本企業にはこれからの時代でも戦える強みやリードできる分野というのはあるのでしょうか。
宮田 AIやテクノロジーのどまん中は厳しいですね。僕が考えるのは「カルチャー」に近い部分が有利ではないかということです。よく言われるように、日本の外食チェーンやレストランなどの飲食店、小売店のリアル店舗のサービスの質の高さはやはり随一だと思います。
日本料理というと、会席料理から、日常のお惣菜のような和食、ラーメンまで、本当に多種多様です。ラーメンひとつとっても麺の太さやコシ、スープ、トッピングにも、さまざまなバリエーションがあり、種類を見ているだけでも楽しいものです。米国でラーメンブームが起こっているのもうなずけます。また、アマゾンで電機製品が買える時代ですが、日本の電機製品の量販店のリアル店舗は盛況ですよね。売る工夫もいろいろある。
平井 デジタルがどれだけ進化しても、最終的にはリアルな部分でモノを消費し続ける。そして、日本はそのインターフェースに強みがあるということですね。
宮田 アマゾンのレコメンドだけでモノを選ぶのではなく、ときには丁寧な接客がうれしいのではないかと思います。
平井 それを安易に言うと「おもてなし」ということになってしまいますが(笑)。ヒューマンタッチャブルな部分がきっかけになるということですね。