また就業時間中に転職先企業や転職エージェントとやり取りをしていたメールの形跡もあった。

 植田は、有田の行動にショックを受けるとともに、自分は管理職として何をやっていたのかと、激しく落ち込んだ。

納品先から有田の転職先の
Y社に鞍替えしたいと連絡が…

 植田はチームを編成し直し、皆で開発に取り組むことになった。ところが3月のある日、取引先の担当者から驚くような連絡が入った。

「担当をしていた有田さんですが、ライバルのY社に転職したらしいですね。転職した理由は上司からパワハラを受けていたとか……。うちはY社とも取引があり、打ち合わせで有田さんが同席したから驚いたんですよ。感じもよくて優秀ですね。有田さんがいないなら、御社ではなくY社にプロジェクトを引き継いでほしいって思っています」

 有田は「上司のパワハラがあったから」と嘘をついて、同業他社のY社に転職したようだった。

 植田は、パワハラがなかったこと、有田が突然退職したこと、引き継いだプロジェクトは社内の精鋭メンバーが期日までに必ず納めることを取引先に必死に説明した。しかし、取引先の担当者は「上と相談するので検討させてほしい。既に最初に約束した納期は過ぎている以上、その時点で御社との取引を考え直そうと思っていた」と冷たく言い放たれてしまった。

 植田はその後も取引先に何度も足を運び、担当者に直接状況説明をしようと試みたが、会ってはもらえなかった。

「今回のプロジェクトは取引を停止されるかもしれない。何とか納期に間に合わせたい。みなさん大変だと思うが、協力してほしい。お願いだ」

 植田は自ら先頭に立って呼びかけ、不眠不休で開発に取り組んだ。メンバーの協力もあり、何とか納期の目途が立ちそうだと思った矢先、取引先の担当者から電話が入った。