震災からまもなく1年。さまざまなメディアで震災特集が組まれるはずだが、今回は復興支援の視点から、さまざまな支援活動の問題点を指摘すると同時に、復興フェーズに入った被災地の今後に必要な支援策とは何かをお伝えしたい。
数多くの支援団体がいまでも東北各地で活動を続けているが、その支援は本当に意味があるのか、と思うような活動も多い。その最たるものが「心のケア」だ。マスメディアも多くのNPOも、被災者には心のケアが必要だとアナウンスし、多くの国民もそう信じているだろう。しかし、実際には多くの被災者は心のケアなど必要としていない。
度重なる訪問に
「心のケアお断り」という避難所も
これについては「WEDGE」という雑誌の3月号で興味深い記事が掲載されている。孫引きになるが、11年6月22日付けの読売新聞ではこんな実情を伝えていたという。
ある避難所では、次々と訪れる「心のケア」チームに辟易して、「心のケアお断り」を宣告。ここを訪れたボランティアに対しても「心のケアを名乗らないでほしい」と告げた。
実際に筆者も、この頃に訪れた被災地各地で、「いろいろなNPOがやって来るけど、どいつもこいつも心のケア、心のケアってうるせえよ!! 心のケアって聞いただけでこっちは鬱になる」という言葉を何度か聞いた。東松島から釜石にかけて、さまざまな地域で支援ニーズをヒアリングしたが、心のケアに対するニーズは聞いたことがない。
もちろん、本当に心のケアを必要としている人もいるだろうが、大多数の人は当時もいまも、復興に向けて頑張ろうとしているわけで、そのような人たちに必要なものは心のケアではない。もっと具体的な復興支援のプランであり、気持ちを前向きにする具体策である。
同記事を書いた獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授・井原裕氏は指摘する。被災地には、心のケアよりも身体のケアの方が重要だと。
一般に被災者の生活習慣はかなり乱れている。生活の乱れは運動不足を招き「エコノミー症候群」を引き起こす。石巻市と石巻赤十字病院が仮設住宅の住人498人を対象に行なった調査では、43人(8.6%)がエコノミー症候群を発症していたという。