これに加えて、7月24日から28日にかけ空母G・ワシントンなど20隻が参加した合同演習を行い、さらに10月16日から20日にかけては空母R・レーガンや巡航ミサイル「トマホーク」を最大154発搭載可能な原潜「ミシガン」など米韓の40隻が参加する海軍演習、11月11日~15日には米空母3隻が日本海に集結し、海上自衛隊、韓国海軍と合同演習、12月4日~8日には、ステルス戦闘機F22やF35を含む米韓空軍機230機が参加した「ビジラント・エース」演習など、さかんに大規模な演習を行って軍事的圧力(威嚇)を加えた。

 だが、米国の軍首脳たちは武力行使に慎重だ。マティス国防長官(退役海兵大将)は「武力的解決に突き進めば信じ難い程の悲劇的事態となる」と説き、米統合参謀本部は上下両院議員16人の質問主意書に回答した文書の中で、「北朝鮮の核兵器は地下深くに配置されており、位置を確定し、すべてを確実に破壊するには地上部隊の侵攻が唯一の手段」と述べ、「外交的解決を支持する」と、戦争反対の姿勢を示した。

 米軍が航空機や巡航ミサイルで先制攻撃をしようにも、北部山岳地帯の谷間に掘られた無数のトンネルに、自走発射機に載せて隠されている百基以上の弾道ミサイル(うち約30基は核付きと見られる)の詳細な位置は不明だ。

 一挙に全部を壊すことは不可能で、一部を破壊すれば、米軍、韓国軍との戦争で滅亡必至の北朝鮮は自暴自棄となり、残った核ミサイルを韓国、日本に発射する公算は大きい。両国で数百万人、あるいはそれ以上の犠牲者が出ることになりかねないし、韓国に23万人、日本に9万人の米国民間人が住むから米軍首脳部は開戦に慎重にならざるを得ないのだ。

 一方で、米国では、タカ派の政治家、論客が「北朝鮮が米国に届くICBMを配備すれば、米国は北朝鮮の核の脅威にさらされる。そうなる前に潰し、米国民の命を守るのが第一だ。他国の犠牲には構っておれない」と主張する。世論調査でも米国人の63%は武力行使に賛成、反対は32%だ。

 トランプ大統領も武力行使を主張する議員に対し「それをやれば多くの死者が出る。だがそれはあちら(朝鮮半島と日本)で、こちら(米国)じゃないがね」と言ったと報じられる。

「アメリカファースト」を唱え次々に非常識で軽率な行動を取って来た不安定な人物を対手にチキンゲームをすることになった金委員長は、一歩間違えれば滅亡につながるだけに、相当な恐怖心を抱かざるを得なかっただろう。米国の最大の抑止力は「何をするか分からない大統領」とも言えよう。