世界の国々で何が起きているのか――。私がグローバリゼーションについて書き始めてから30数年が経ちました。グローバリゼーションというのはひと言でいうと、企業の運営、お金、技術、市場の世界的レベルに於ける最適化のプロセスを意味します。

 かつてグローバリゼーションというと、工場を労賃の安いところに移すことを指しました。工場配置の最適化をしても、マーケットは日本やアメリカに存在したままです。今のように世界中にマーケットが存在する時代ではありませんでした。

 最近は工場だけではなく、R&D――研究開発なども最適化によって海外に出て行く時代になりました。今、製薬会社のほとんどはインドに重要な開発工程を移しています。さらには、開発・設計部門だけでなく、本社部門の経理、売掛債権管理、請求業務までを海外に置く企業もあります。現在、GE(ゼネラル・エレクトリック)はインドに本社業務部を移しています。

 このように、世界中の企業が国境を跨ぐようになりました。工場配置だけを世界的に最適化するのではなくて、R&D、設計、サービス部門といったあらゆる部門が海外に出て行く時代になったのです。日本企業も一部、トヨタ、コマツなどがアグレッシブに取り組んでいます。また、旭硝子、JTといった企業も成功事例を持っています。

米国一辺倒だった日本は、
人材育成で遅れを取った

 世界をいかにして自分の友人にするか。これが企業の存続を決定づける大きな要因の一つになっています。グローバリゼーションを進めていく上で、日本が圧倒的に遅れているのは人材育成です。

 企業は、自社が関係する国については、その国ごとのエキスパートがいないといけません。しかしながら、その国のスペシャリストを作ることは、20年はかかる仕事です。日本とは違う文化、生活習慣の中でビジネスを通して何回も失敗し、さまざまなことが伝承され、初めてDNAの中に染み込んでいくのです。