横軸が1.00なら「生活保護と同じ」ということになるが、一家には新規に社会保険料・医療費の自費負担・所得税などの負担が発生している。このことを考えると、1.40が「生活保護より少し上」といえる所得であろう。

 ところが実際には、1.00以下、すなわち生活保護以下の所得しかないにもかかわらず「就労によって脱却した」とされている世帯が、全体の25%を占めている。1.20ならば、「医療費が必要ない」などの好条件が揃えば「生活保護並み」と言えなくはないが、1.20以下が約50%。医療費自費負担などを考慮した上で「生活保護と同等」と言えるのは1.40と考えられるが、実際にはそれ以下で生活保護脱却となった世帯が全体の約73%となっている。

「生活保護だったけれども努力して就労し、生活保護を脱却した」という成り行きは、本人も周囲も望んでいたものなのかもしれない。しかし実際に起こっていることは、「努力して就労して、生活保護を脱却し、生活保護以下の暮らしになった」という、まことに救いのない事態なのだ。

「無間地獄」化する
日本のワーキングプア

 生活保護で暮らす人々が、就労のために努力しても、「充分な収入が得られるようになったので生活保護を脱却した」という結果を手にすることは難しい。このことには、数多くの背景があるだろう。しかし、ここではっきりしていることは、就労はしたけれども「生活保護以下の暮らしにしかなれない」という状況で、生活保護から脱却したことにされている人々が少なからずいることだ。

「生活保護スレスレ」「生活保護が羨ましい」というワーキングプア状態には、多くの人々が陥りうる。そこに負傷や病気などのトラブルが重なれば、「生活保護しかない」ということになる。しかし、生活保護によって落ち着いた生活を取り戻し、就労によって生活保護から脱却しようとしても、戻っていく先はワーキングプア状態だ。何らかのトラブルが発生すれば、また「生活保護しかない」ということになるのは必然だろう。

 私は「ワーキングプア無間地獄」という言葉を使いたくなる。いったんワーキングプアになったら、その後は、生活保護またはワーキングプアの世界に閉じ込められてしまうしかない。抜け出せる可能性はあるのかもしれないが、確率は低い。