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スマートフォンの理想と現実

競争力向上と巨大市場を背景に勢いづく中国勢、
新興国BOPビジネスをも射程に収めるケータイ産業

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)レポート【前編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第19回】 2012年3月2日
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街中を走り回るHuaweiマークをつけたメルセデスの高級ハイヤーが同社の勢いを象徴

 MWCの開催期間中、バルセロナの街中はケータイ産業一色となり、ビルを丸ごと覆うようなスマートフォンの看板があちこちに掲げられる。その中でも、Huaweiが大量に借り上げたメルセデス・ベンツの高級ハイヤーは、まるでタクシーのように走り回り、一際目立つ存在だ。これに太刀打ちするのは容易でない――少なくともそう思わせることには確実に成功しているのは間違いない。

存在感を増す新興国市場

 MWCの定点観測を続けていると、年々のトピックスという〈点〉だけでなく、それを結んでいくことで〈線〉、つまりケータイ産業のトレンドに気づくことがある。

 たとえば近年の市場トレンドとして挙げられるのは、MWCにおいても新興国の存在感が増しているということである。先の中国もその一つといえるかもしれないが、もはや世界第2位クラスのGDPを有する彼らを新興国と呼ぶのは、ちょっとした違和感がある。そうではない、いわゆるBOP(Bottom of the Pyramid:開発途上国の低所得者層)市場をも、世界のケータイ産業は射程に入れつつある。

 そうしたBOP市場が大きい地域の一つにインドがある。インド社会も格差が激しく、日本人をはるかにしのぐ高学歴・高収入を得て、グローバルに活躍するビジネスパーソンと、雨風さえもしのげない「スラムドック・ミリオネア」の世界が混在しているが、全体としては成長を続ける国で、ケータイの普及も成長が大きい。

インド第1位の携帯通信事業者Bharti Airtelのブース。加入者は1億人を超える

 このインドで、1億人を優に超える加入者を抱える第1位のケータイ通信事業者が、Bharti Airtel(以下バーティ)である。このバーティ社はここ数年、MWCのカンファレンス等で引っ張りだこであり、また会場内の目立つ場所に大きな商談ブースを構成するなどして、世界中の業界関係者と商談に勤しんでいる。

 細かく見れば、このところインドのケータイ市場は、電波オークションを巡る問題や、競争激化による業績の伸び悩み等も見られる。しかし事業の成長という観点からすれば、単一事業者が1億を超える加入者を要しつつもいまだに市場が拡大傾向にあるインドは、すでに国全体が曲がり角に入った中国に比べ、インパクトは大きい。特に通信事業者であるバーティは、MWCでは調達する側であり、各国の事業者は彼らのお眼鏡に適おうと躍起だ。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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