昨年12月19日、環境省は「放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染廃棄物対策地域、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の指定について(お知らせ)」(★文書A)という長いタイトルの文書を発表した。普通の言葉に翻訳すると、「福島原発事故による放射能汚染地域をランク分けして確定した」ことになる。
今後の除染を考えれば、正しい行政の判断である。ただ、非常にややこしい官庁の作文なので、多くの市民に周知しているとは思えない。首都圏の「汚染地域」に住む友人や知人20人ほどに聞いたところ、だれ一人知らなかった。もちろん新聞などで報じられているが、プレスリリースの丸写しが多く、わかりにくい。
そこで、かみ砕きながら解説し、自治体がどのように考え、行動しているかみてみたい。
環境省が定めた3つの「汚染地域」
★文書Aによると、環境省は「汚染地域」を3分類している。原文はこうだ。
「放射性物質汚染対処特措法では、環境大臣は、国がその地域内にある廃棄物の収集・運搬・保管及び処分を実施する必要がある地域を汚染廃棄物対策地域として、また国が土壌等の除染等の措置等を実施する必要がある地域を除染特別地域として指定することができ、さらに、その地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域を汚染状況重点調査地域として指定するものとされています。」
そこで同法にのっとり、昨年12月19日に「指定」したというわけだ。汚染廃棄物対策地域と除染特別地域は同一で、福島県内の警戒区域と計画的避難区域である。つまり、住民を避難させた福島県の各地域は、国が全面的にすべて処理するという意味である。指定された福島県の11市町村は以下のとおり。
楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 以上は全域
田村市 南相馬市 川俣町 川内村 以上は、市町村域のうち警戒区域、または計画的避難区域の部分
首都圏におよぶ
「汚染状況重点調査地域」
下位レベルの汚染状況重点調査地域は広大だ。この区分の定義は、「放射線量が1時間当たり0.23μSv(マイクロシーベルト)以上の地域」である。汚染状況重点調査地域は、費用は政府が負担するが、調査、除染立案、作業は自治体が行なう。
筆者は、昨年3月から5月にかけて「チェルノブイリの教訓」と題して14回連載したが、第6回と第10回で放射線量の数値の意味を詳細に解説した。重複するが、市民が認識しておくべきデータなので一部再論しておく。
ICRP(国際放射線防護委員会)の「1987年勧告」を基準にすれば、 一般公衆の年間被ばく許容量は1mSv(1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト)だ。日本政府は屋外にいる時間を1日8時間として計算する方法を公表している。この計算法によれば、一般公衆は1時間当たり0.19μSvが限界量となる。