2月中旬のある日の朝、ファミリーマート社長、澤田貴司を乗せたワンボックスカーが、都内の住宅街の店舗に停車した。独立したオーナーのフランチャイズ(FC)契約ではなく、会社が直接運営する複数の店舗の視察だ。澤田は降りるなりスーツの上着を脱いで、店舗のスタッフが着るのと同じユニホームを羽織る。名札には「さわだ」の名前の上に「トレーニング中」と書かれている。
「こういうのはもったいないから、やめた方がいいよね」と言いつつ指さした先は、片側1車線の狭い道路を挟んで“対峙”するセブン-イレブンの店舗だ。
「コンビニ市場は飽和している」「24時間営業が本当に必要なのか」──。伊藤忠商事からユニクロを運営するファーストリテイリング副社長を経て、自ら立ち上げた事業再生支援会社、リヴァンプの社長から2016年9月にファミマの社長に就任した澤田は、業界の常識にあらがう挑発的な発言を繰り返してきた。本誌16年10月29日号のインタビューでも、業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンを念頭に「『ファミマをなめるなよ』と声を大にして言いたいですね」とたんかを切っていた。
ただ、華麗な経歴を重ねてきた澤田とて、従業員6000人超、さらに独立したFC店を中心に約1万7000の店舗を持つような巨大企業のトップに立つのは初めてであり、悩みは深い。