谷岡発言の華麗な
ブーメランを検証する

 09年3月24日、まだ民主党議員だった谷岡氏は、外交防衛委員会で民主党の浜田靖一防衛大臣に対して、自衛隊内で発生したセクハラ事件について厳しく追及を始めた。これは女性自衛官が同僚から性暴力を受けたうえ、ほどなく退職を要求されたというものだ。女性は訴訟を提起したが、任用継続拒否通知が送られ実質解雇された。

 この女性にヒアリングをしたという谷岡氏は、当時未成年であったにもかかわらず上官から酒の席に呼ばれ、お酌を強要されたと訴えたとしてこう述べた。

「女性にとって生きにくい仕事場を生んでいるのではないか」
「私どもから見れば、やはり未成年に対する配慮の欠如であり、また女性に対する配慮の欠如だと思われます」

 さらに追及の矛先は、自衛官による国賠訴訟というテーマに移った。先ほどのケースでは原告女性は実質解雇されてしまったが、もし再びこういう問題が起きた場合のことを想定し、実に素晴らしいことをおっしゃっている。

「もし裁判の原告になって、例えば国を相手に裁判を争うような者が今後出ました場合に、その当該隊員が何らかの形でパワハラでありますとか、また差別的な扱いでありますとか、非常にいづらくなるような言動をされる、そのようなことがないように、やはり隊全体として気を付けていただけるということもお約束いただけますでしょうか」

 軍隊という「上の命令は絶対」というガチガチのピラミッド社会のなかで、弱い立場の人間がセクハラ・パワハラ被害の声を上げることはなかなかできない。だから、被害者が萎縮するようなことをやめてくれ、とクギを刺しているのだ。

 そう聞くと、もうおわかりだろう。9年前はこんなに教育者らしい立派なご発言をしていたにもかかわらず、先日マスコミの前にあらわれた谷岡学長は、内閣府に被害を訴えた人々を「恣意的で訳のわからない」と見下し、現役続行を表明していない伊調さんに対しても「五輪を目指すはずがない人」と、レスリング界にいづらくさせるような発言されたのだ。

 ご本人の意図は定かではないが、言葉を素直に受け取れば、被害を訴える者を萎縮させて、訴えを取り下げさせようとしているとしか思えない。