安倍首相の約束通りに
現れなかった政務三役
2018年度予算案の成立を目前に控えた2018年3月19日午後、厚労省内の会議室では、画期的な出来事が予定されていた。厚生労働大臣、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官の政務三役が、生活保護で暮らす人々と対面し、生活保護基準と生活保護法改正案に関する意見を直接聴く約束となっていた。
もともと2013年に改正生活保護法が成立したときの付帯決議で、5年後、つまり本年に見直しを行い、生活保護で暮らす当事者の意見を聴くこととなっていた。
なお次年度予算案は、衆議院での可決から30日後が年度内の場合、参院での審議が終了していなくても自動的に成立する。今回は2月28日に衆議院で可決されたため、3月30日に自動的に成立する。その予算案には、2018年秋からの生活保護基準引き下げ予定が含まれている。引き下げを止めることができるのは、厚生労働大臣だけだ。
しかし結局、政務三役は現れず、代わりに社会・援護局長の定塚由美子氏が登場した。これだけでも画期的だったと言えるかもしれない。というのは、生活保護に関する請願や交渉では厚労省職員が現れるとしても、たいていは課長補佐または課長だからだ。
ともあれ3月19日、局長クラス、しかも全国の生活保護行政を含む公的扶助を束ねる社会・援護局の局長が、生活保護で暮らす当事者たちと直接会って肉声を聴いた。
この会談を約束したのは、安倍首相だ。3月5日の参議院予算委員会で、山本太郎議員(自由党)の「総理、(生活保護の)当事者の声、聞いたことありますか。聞いたことがないのであればセッティングします。直接聞いていただきたいんです」という質問に、安倍首相はこう答えたのだ。
「まさにこれは担当の厚労大臣がしっかりと所管をしているわけでありますから、そうした声については担当の大臣あるいは役所からしっかりと承りたいと、このように考えております」