大きなイノベーションは、
おカネがない時に起きる
典型的なスタートアップを考えてみよう。
大きなイノベーションのほとんどは、おカネが全くない時に起きる。
スタートアップにおカネが流れ込み始めると、イノベーションは止まり、創業者は規模拡大に集中する。
有効なビジネスモデルが見つかっている場合はそれでもいいが、ビジネスモデルが未熟なら、資金が流れ込むことで逆に規模拡大が妨げられてしまう。
事例をいくつか挙げよう。
〈カラー〉はイベントの際の画像共有アプリを提供するスタートアップで、4100万ドルを調達した。
問題は、カラーに有効なイノベーションがなかったことだ。
あったのはただの壮大なビジョンだけだった。
資金調達のタイミングも早すぎた。
ほとんどのスタートアップなら銀行に4100万ドルもあれば飛び上がって喜ぶはずだが、カラーの場合はそのおカネが仇になった。
自由に実験ができなくなってしまったのだ。
4100万ドルもの現金と引き換えに、ベンチャーキャピタル(VC)はビジョンの実現を期待した。
おカネの上にあぐらをかいていることはできなかった。
それが終わりの始まりだった。
何度か続けて方向転換に失敗したカラーは、二束三文で資産をアップルに売却せざるを得なかった。