これに対し、東京都精神医学研究所の新村順子氏は、「現実の保健所など公的機関では、介入がなかなかできない。施策面でバックアップを検討していただけると助かる」と現状を訴えた。また、前出の水田教授は「見守るべき引きこもりもいる。介入すべきかどうかを見分けるには、当事者に出会うしかない。しかし、自宅を訪問すること自体が、侵入的になってしまう。相談者が1人でも侵入的になるとしたら、複数になると、より侵入的になる危険性がある」と指摘した。

 こうした新ガイドラインの公表や、4月から施行される「子ども・若者育成支援推進法」に対し、NPO「全国引きこもりKHJ親の会(家族会連合会)の奥山雅久代表は、「大変心強い」と期待を寄せる。同会は、10年前に3家族で発足して以来、現在は全国で8000家族を超える、引きこもりを抱えた国内最大の家族組織だ。

 「引きこもりが、ただの状態像であれば、何でこんなに苦しんでるのに、偏見やレッテルを張られるのかと本人は思うだろう。やはり、目には見えない障害や特性で、緊張、恐怖、不信があれば、人間関係に入れず、自分のコントロールでは取れない。何らかの疾病や障害名を付けなければ、社会は理解できないだろう。本人の中で声を上げる人が少ないので、我々が代弁せざるを得ない。引きこもりは、WHOの言う“生活機能障害”だと思っています」

 欧米並みの潮流に、ようやく日本の福祉政策も合致してきたと、奥山氏は指摘する。

 一旦、引きこもりに陥った人たちは、回復することがなければ、そのまま休職から退職していく。すると、会社などの目からも届かなくなる。地域ですくい上げる体制が整備されていなければ、彼らは、地域の中に沈み込んでいってしまう。

 こうした新たなガイドラインが、現場の各機関に周知徹底することで、引きこもる人たちへの対応に、具体性や根拠を持たせることができる。

支援法制定でも救われない
40歳以上の引きこもり

 一方で、講演を聞いた40代の当事者の1人は「40歳を過ぎて、評価されるキャリアもない人間は、社会復帰を考えること自体、虚しくなってくる」と、もらす。

 40代未満を対象とする支援法を制定し、国のガイドラインを設けたことは、引きこもりを公的に認知し、救済していく上で、大きな前進だが、40歳以上の世代には、諦めにも似た空気が漂っていることも忘れてはならない。