高まる“米中貿易戦争”の懸念
中国台頭で世界のパワーバランスも変化?

 足元で“米中貿易戦争”の懸念が高まっている。その背景には、経済、軍事力などほとんどすべての面で中国が目覚ましい成長を遂げた結果、中国自身が米国と対等にふるまうことが可能になってきたことがある。その意味では、現在の貿易戦争は単なる一時的現象ではなく、世界のパワーバランスを変えるような事態と考えるべきだ。

 事態を複雑化するもう一つの要因は、トランプ大統領が経済運営のための適切な理解力を持っていないことだろう。また、中国の習政権の強い基盤が整備されてきたため、中国政府も強硬な姿勢を取ることが可能になっている。

 ただ、米中両国は本気で貿易戦争を起こす気はないはずだ。大きなサプライチェーンができ上がったグローバル経済体制を崩すことは、両国にとってあまりにもマイナス面が大きいことは分かっているからだ。

 むしろ、米中経済の競争の主戦場は、5G(次世代通信技術)などIT先端分野になるだろう。“中国製造2025”の計画にある通り、中国はIoTの技術を駆使して製造業の革新を目指している。そのために国家を挙げてハイテク技術の開発を進め、米国のIT業界にとっても脅威となりつつある。今後の社会のインフラ、消費、金融などを支えていく先端テクノロジー分野での陣取り合戦といえる。

 その状況に対応するためには、米国が新産業の育成などを強化し、中国以上の改革を進めなければならない。それは、対中強硬姿勢をとることとは必ずしも同じではない。トランプ大統領は、この基本的かつ重要なポイントを理解する必要がある。

貿易戦争は
米国中間選挙年の一種の恒例行事

 トランプ大統領は知的財産権の侵害などを理由に、中国製の製品に制裁関税を課すと表明した。それに伴い、米中貿易戦争への警戒感が高まっている。大統領はトランプ流のディールを仕掛けて中国の譲歩を引き出すことを狙っている。大統領の発言に、世界の株式・外国の為替市場は一喜一憂している。