パラシュートを安心して
背負うための条件

今、A、B、Cの3人が、セスナ機に乗って飛んでいる。

AとBはお客さんで、Cはパイロットだ。

ところが、海の上を飛行中、突然、エンジンの調子が悪くなった。

どうやっても調子は戻らず、3人はパラシュートをつけて飛び降りることになった。

そのパラシュートを畳んだのは、操縦桿を握るCだ。

パイロットは最後に飛び降りると決まっているので、Aから先に飛び降りることになった。

で、セスナのドアを開き、いよいよという時、Aはふと尋ねた。

「パラシュート、ちゃんと畳んだよね?」

「うん、頑張ったよ」とCが答えた。

ここまで話して、立三さんはオレを見て尋ねた。

「君がAやったら、そのパラシュートを背負って外に飛び出せるか?」

「なんかイヤです」

「せやな。Cが頑張ったかどうかはパラシュートの安全性と関係ないもんな」

「そうですね」

「この局面で、君は何としても生き延び、家族のもとに帰らなければならないとしたら、どうする?」

立三さんはじっとオレを見つめた。

オレは考えた。

立三さんの圧力を受けて、考えたことを絞り出した。

「Bに先に飛んでもらう、ですかね?」

「それも1つやな。しかし、Bのパラシュートは開かず、海に消えていった……」

Aは、自分が操縦桿をおさえておくからと言って、Cにパラシュートを畳み直すように依頼する。

言われたCは、後ろでゴソゴソとパラシュートを畳み直す。

Cが畳み終えると、Aが「今度はちゃんと畳めたよね?」と尋ねる。

するとCは「今度は、気をつけたよ」と答えた。

「君がAやったら、そのパラシュートを背負って外に飛び出せるか?」

「イヤです」とオレはとっさに答えた。

「せやな。じゃあCが何と答えたら、Aはパラシュートを安心して背負えるんや?」