西新宿に実在する理容店を舞台に、経営コンサルタントと理容師が「行列ができる理容室」を作り上げるまでの実話に基づいたビジネス小説。「小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや!」の掛け声の下、スモールビジネスを成功させ、ビジネスパーソンが逆転する「10の理論戦略」「15のサービス戦略」が動き出す。
理容室「ザンギリ」二代目のオレは、理容業界全体の斜陽化もあって閑古鳥が鳴いている店をなんとか繁盛させたいものの、どうすればいいのかわからない。そこでオレは、客として現れた元経営コンサルタントの役仁立三にアドバイスを頼んだ。ところが、立三の指示は、業界の常識を覆す非常識なものばかりで……。
12/6配本の新刊『小さくても勝てます』の中身を、試読版として公開します。
森進一はなぜ四谷に住んでいたのか?
ところが、そのまま寝てしまうのかと思ったら、立三さんは「そうや、言い忘れたことがある」といったん閉じた目を開けて言った。
「あのな、物事の裏側には何にでも理由があるんや(リーズンズビハインド)」
「何にでも理由があるんですか?」
「そうや、何にでもある。その仕組みを知った者が成功するんや。だから、何か興味を引かれるような新しいことに出会ったら、その理由は何かな?と徹底的に考えるんや。この前のピーナッツの話もそうやし、今の受験勉強の話もそうや。理屈がわかったら納得するやろ。あとな、例えば、今、住んでる四谷の築三十数年のボロアパートの大家の自慢は、昔、歌手の森進一が売れる前に住んでいたことなんや」
「森進一!マジっすか?」
「そう、ホンマや。なんで森進一は売れるまで四谷に住んでいたかわかるか?」
「さあ、何でしょうね」
「あのな、森進一は当時、クラブ歌手をやってた。でな、銀座、赤坂、六本木、新宿、池袋……クラブの仕事がありそうなエリアから四谷までは、歩く気になったら歩ける。タクシーに乗っても安い。便利ええやろ」
「なるほど!」思わず大きな声が出た。
「だから、物事はリーズンズビハインドで考えなあかんのや」
「でも、偶然ってこともあるんじゃないですか?」
「いや、全てに理由があると思って取り組むのがええんや」
「そうなんすか……」
「そして、全てのことに理由を求めるようになると、なぜか?どうしてか?と物事の因果を深く考えるようになり、それを目的達成のために活用するようになるんや。そしたら最強やろ」
「そうすね」