西新宿に実在する理容店を舞台に、経営コンサルタントと理容師が「行列ができる理容室」を作り上げるまでの実話に基づいたビジネス小説。「小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや!」の掛け声の下、スモールビジネスを成功させ、ビジネスパーソンが逆転する「10の理論戦略」「15のサービス戦略」が動き出す。
理容室「ザンギリ」二代目のオレは、理容業界全体の斜陽化もあって閑古鳥が鳴いている店をなんとか繁盛させたいものの、どうすればいいのかわからない。そこでオレは、客として現れた元経営コンサルタントの役仁立三にアドバイスを頼んだ。ところが、立三の指示は、業界の常識を覆す非常識なものばかりで……。
12/6配本の新刊『小さくても勝てます』の中身を、試読版として公開します。
経営戦略で大切なのは〈選択と集中〉
何か声をかけようと思いを巡らしていると、立三さんが続けた。
「経営戦略で一番大切なことは〈選択と集中〉や言われている。なんでか?そら、理容を専門にすると決め、一心不乱に1人でも多くのお客さんの髪を切ったら、どんどん上手になる。上手になったらこだわりが生まれる。髪を切るのだけは人に負けんのイヤや、と思うようになる。髪を切るのは私に任せてください、いうようになる。それが社会や。それが人生やろ」
「そうですね」
「アメリカの伝説の経営者と言われるジャック・ウェルチは、発明王トーマス・エジソンが創業したゼネラル・エレクトリック(GE)の複雑多岐にわたる事業を『市場シェアで世界1位か2位になれないものは、再建か売却か閉鎖』と宣言して、整理&再編して、選択と集中を徹底させたんや」
――あー、何かわかる気がする。
「経営というのは結局、何に集中し、どの順番でやるのか。それを決めることが肝心なんや」
「すごいっすね」
「〈選択と集中〉は会社経営だけやない。受験勉強も一緒やで」
「そうなんすか?」
【選択と集中】
自社が得意とする事業分野を明確にして、不得意分野を切り捨て、得意分野に経営資源を集中的に投下する戦略。1980年代、ジャック・ウェルチが率いるGEは、この戦略に基づいて資源の再分配を行うことで業績を飛躍的に向上させた。