今回は、右表の企業を取り上げる。
企業名だけを並べれば、何の関連性も見えない。ところが、たった1つの経営指標を用いることで、「独占の系譜」を展開できるのだから、経営分析は奥が深い。
経済学は、自然独占・複占・寡占・独占的競争といった抽象論を展開する。抽象的であるが故に、筆者のような実務家からすれば「そうなのか?」と疑問を抱くケースが少なくない。
今回はその疑問点の一つを、〔図表 1〕に掲げた企業の決算データを用いることで解明してみよう。要するに、独占といっても「いろいろあらぁな」である。
自然独占などの形態を語るにあたって、第78回コラム(ニッサン、ヤマダ電機、ソフトバンク編)では、「需要の価格弾力性」の逆数を利用した「ラーナーの独占度」というものを紹介した。経済学ではお蔵入りした指標であっても、実務の立場から光をあてれば煌々と輝くものがあるということだ。
ただし、上場企業の有価証券報告書や四半期報告書から、「需要の価格弾力性」や「ラーナーの独占度」を解析するのは手数を要する。XBRL(extensible business reporting language)が定着したとはいえ、「需要」に関するデータを有価証券報告書などから拾い出すには、それなりの注意が必要だ。
別の方法はないものかと筆者のほうで考案したのが、同じ第78回コラムの後半で紹介した「タカダ式バリュー度」である。これは「供給の価格弾力性」の逆数を利用したものだ。例えば、NTTとJR東日本の「タカダ式バリュー度」を描いたのが、次の〔図表 2〕である。
〔図表 2〕の中央にある赤色の水平線は「1倍」を表わしている。以下の図表でも同様である。