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気はやさしくて胃痛持ち
【第12回】 2012年4月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
市川純子 [(財)日本ヘルスケアニュートリケア研究所]

オフィス移転を機に退社。
タクシードライバーの苦労

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お客様が探せない
売り上げのノルマがいかない

 ベテランのタクシードライバーと、新人の自分との違いは時間に合わせたコースの読み方だ。月曜の朝は中央線の○駅の南口。雨が降った金曜日は大手町の○ビル。給料日と金曜日が重なったときは恵比寿の飲食店の前。新人のNさんは上手にお客様の行動を読んで動くことができない自分が情けない。ノルマが達成できない夜は、事務所に帰る前に胃が痛くなった。

 ある晩、泥酔したお客様を乗せて行き先を聞き出すことができず、その場から走り出すことができずに往生した。

 「お客様すみません。どちらに行けばよろしいでしょうか」。何度尋ねても返事がない。運転席から出て、後部座席にまわりお客様を起こそうとしたら怒鳴られた。

 「お前、俺に何をしたんだ。触ったな。タクシー会社に文句言うぞ」その声の大きさと迫力に震えあがった。それ以来酔ったお客様を乗せるのが怖くなってしまったNさんだった。

都内から地方都市に

 激戦区の都内のタクシー会社を辞めて、Nさんが地方都市に引っ越したのは2年前。Nさんの奥さんの実家の父親が定年退職をしたきっかけにNさん夫婦のために二世帯住宅を建ててくれたからだ。東京生まれなのに都会暮らしになじめなかったNさんなので、空気がきれいで人の優しい田舎暮らしは快適だった。

 しかし車社会が当たり前の田舎では、タクシーは酔ったお客様ばかりだ。夜に、男性1人のお客様を乗せると必ず飲食店の名前を言われる。知らない店の名前を言われると「すみません。どちらの街ですか?」と尋ねると、「あんな有名な店も知らないでタクシーの運転手やっているのか?」あきれた声で怒られる。地方都市では、タクシーに乗るお客様は地名ではなく飲食店の名前を告げる。

 いつまでたっても覚えられない自分が情けなくなり、また胃が痛むNさんだった。「早く一人前になりたい」。休みの日もNさんはハンドルを握り続けている。

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市川純子 [(財)日本ヘルスケアニュートリケア研究所]

1961年生まれ。財団法人日本ヘルスケアニュートリケア研究所 所長。広告代理店で大手私鉄の広報を担当。その後PR会社に転職し、医薬品や化粧品分野に携わる。2003 年にJ&Tプランニングを設立。代表取締役に就任。研究や情報の開発も行いヒット商品を数多く手がける。医療健康美容分野の研究のために2010年財団を設立。


気はやさしくて胃痛持ち

失われた20年と呼ばれる日本経済。そんな長い停滞のなかをがむしゃらに、ひたむきに日々の仕事・生活を生きてきたビジネスマンたち。さまざまなストレスに耐えてきたカラダもそろそろ注意信号を出す頃。いろんな職場のいろんなビジネスマンのいろんな悩みと不調を少し悲しく少しおかしく紹介します。

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