多い時は月に3回中国に飛ぶことがあるし、地方都市や外国人がなかなか入れない内陸部まで足を伸ばしているので、うぬぼれではないが、自分では、結構、中国の現状を知っていると思っている。しかし、実際、地方都市を回ると、中国を知っていると自慢するのは自分の思い込みに過ぎないと思い知らされ、時々、自信喪失に陥ることがある。
今回の山東省訪問もそうだった。今度の訪問先は東営市とエン(六の下に允)州市であった。東営市についてはこれまで数回も訪れたことがあり、日本国内での講演でもかなり取り上げていた。「中国のドバイ」という私が作った紹介の仕方も、日本企業の中でかなり浸透していると聞いている。
しかし、エン州市はまったくはじめての訪問先だ。石炭の産地として知られるという程度の予備知識しかもっていなかった。中国国内の省レベルの行政区のなかで、GDP3位を誇る山東省に属している地方都市なので、そこそこ豊かだろうとは思ったものの、そんなに豊かな地域とは認識していなかった。
孔子の故郷である曲阜のはずれにできた高速鉄道の「曲阜東站(曲阜東駅)」で、上海からやってきた他の関係者たちと合流してからエン州に向かった。初春の気配が濃くなってきたせいか、道路の両側に時々見られる柳の枝には、浅黄色に見える淡い緑が微かに宿っている。だが、路傍にたたずむ建物には古いものが多かった。沿海部と比べてどうしても貧相に見えてしまう。「やっぱり差が大きいね」と心の中ではそう呟いた。
教育費はすべて市が負担
だが、会見に来た経済担当の陳秋生副市長と同市の現状についての雑談をしたら、意外な事実を教えられた。
「エン州市では、幼稚園から高校卒業まで教育に関わる学費は一切取っていない。すべて市政府が負担する」