以前、高知県を訪問した時、馬路村(うまじむら)を訪ねてみたいと県関係者に頼んだことがある。その時、スケジュールの都合で結局は実現できなかった。だから、昨年末、高知を再訪する機会を得た時、念願の馬路村の訪問がようやく実現できることにまず興奮を覚えた。
馬路村の名前を初めて知ったのは、数年前の山梨県観光懇話会の会議中だった。「萌木の村」を経営する舩木上次さんの発言の資料に馬路村の名前が出ていて、そのユニークな筆文字の村名表示などを見て、村としては珍しいブランディング戦略を立てていると感心し、訪ねてみたいという気持ちが湧いてきたのだ。
もう一つ、私の関心を引き寄せたのは、馬路村の「経営」だ。そこに日本的な何かがあるのではと、勘が働いたからだ。
深刻な中国の「三農問題」
昨年の1月に、このコラムで中国の金持ち村を取り上げたことがある。江蘇省江陰市長江村と華西村だった。
前者は1世帯に黄金100g、白銀100gのボーナスを配布したことで、中国で大きな話題を集めている。後者は、港湾、物流、鉄鋼、化学、不動産、機械電機製造などの8分野の48の企業を管轄し、10年の売上額は450億元になるという裕福ぶりだ。これまで、山東省栄成市の西霞村などの金持ちの村を訪問している。
これらの金持ち村に共通しているのは、海外とのつながりを持ちやすい豊かな沿海部にあり、工業や加工業を積極的に進めることで、所得を大きく向上させたことである。その意味では、これらの村の成功経験は、中国の、特に内陸部にある多くの農山村にはとっては通用しない。
本業の農業や林業で豊かになった村はないのか。これまでいろいろ探してみたが、残念ながら、私の取材範囲が狭すぎたのかもしれないが、数年かけて探しても見当たらなかった。