「いったい何歳から子どもにはスマホやタブレットを持たせてもよいのか。動画やゲームに依存してしまったり、成長面で問題が出る心配はないのか」。せがまれればためらいながら使わせてはいるものの、漠然と不安と抵抗を感じている親は多い。世界中の子どもの親が直面するこの問題に、科学的にはっきりとした指針はないものなのか。
世界的サイバー心理学者として知られるメアリー・エイケン博士が、デジタル・テクノロジーが人間にどのような影響を与えるか、とりわけ子供の成長への影響を発達段階ごとに見ながら、子育ての中での影響を科学的にまとめた話題の新刊『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される――いまの科学が証明した子育てへの影響の真実』から、一部抜粋して紹介する。

子どもがネットでいじめられていても、
大人からは見えない

 多くの親は、子どもたちがオンラインで「友人」をつくっているのを見て、静かに安心したり、誇りに思ったりしているのだろう。友人を得るというのは、通常は社会の中における居場所と、幸福を手にしているというサインだ。

 しかし親たちは、人間の残酷さがオンライン上でいかに巨大なものになりうるかについて、知っておく必要がある。中学生頃の女の子なんて意地悪なものさ、といった程度の認識であれば、あなたはインターネット上のエスカレートした環境の中で、彼らがどこまで過激な行動に走れるかを理解していない。

 サラ・リン・バトラーの悲劇を忘れてはならない。彼女は快活で、美しい12歳の少女だった。2009年のこと、サラはアーカンソー州ウィリフォードにあった学校の秋のフェスティバルに向けて、クイーン役に選ばれた。中学1年生だった彼女は、そのニュースに「とても喜んでいた」と、母親がメディアの取材に対して語っている。母親によれば、サラは「いつも笑顔で、ふざけたり、遊びまわったり」していて、「大勢の友人がいた」そうである。

 そこに問題が起きた。サラがクイーンに選ばれると、彼女がSNSのマイスペース上に開設していた自分のページに、不愉快なメッセージが書き込まれるようになったのだ。そしてオンライン上で、彼女が本当は「あばずれ」だ、などといった悪口が流れ始めた。

 母親がサラのマイスペースに気づき、何が起きているのか話すように言うと、母親はすぐにサラの友だちリストから外され、娘のページを閲覧できなくなってしまった。

 それからまもなくだった。ある日の午後、サラの家族が用事で出かけることになったとき、彼女は家にいたいと言って1人で残った。ウェブの閲覧履歴によれば、それから彼女はマイスペース上の自分のページにログインして、投稿されていた最後のメッセージを目にしたらしい。そこには、彼女が「バカで世間知らずの女の子で、いなくなっても誰も悲しまない」と書かれていた。家族が家に帰ったとき、彼女は死んでいた。

 12歳の少女は、首を吊って自殺したのである。遺言には、他人が自分について言うことに耐えられないと書かれていた。