内閣府の「自殺対策白書」で、夏休み明け前後に子どもの自殺が急増するというデータが明らかになった。なぜこの時期なのか。現代の子ども特有のネットいじめ事情について、安川雅史・全国webカウンセリング協議会理事長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

1日中LINEにハマる
夏休みに潜む罠

――夏休み明けとなる9月1日前後に、子どもの自殺が急増するというデータが出ました。夏休み中に、一体何が起きているのでしょうか?

 現代の子どもたちの人間関係には、インターネットが欠かせないツールになっています。LINEやTwitterといったSNSはもちろん、オンラインゲームの依存症状態になっている子どもたちがたくさんいます。中学生や高校生になれば、自分のスマートフォンを持つ子が増えますし、小学生であっても、親が音楽を聞くために買い与えたiPod touchでLINEを始めたりします。

 子どもたちはLINEでグループを作り、その中でコミュニケーションします。実際に会話するようなスピードで、文字をやり取りするのです。そして、ちょっとした言葉の行き違いなどがきっかけで、グループから退会させられたり、裏グループができて、そこに入れてもらえないなどのいじめが勃発するのです。今のいじめの風潮は、1対1ではなく、1対集団です。

 授業や部活があれば、その間LINEはできません。しかし、夏休みというのは自由な時間ですから、1日中LINEをやってしまう、というような状況に陥りがちです。「グループの会話にいつも入っていないと仲間外れにされる」と恐れるあまりに、「家族旅行で海外に行く計画があるけれど、飛行機の中でLINEができないから嫌だ」とか、「映画も見に行きたくない」という子どももいます。

やすかわ・まさし
1988年大学卒業後、同年北海道立の高等学校勤務。89年、札幌の私立の高等学校、94年第一高等学院を経て2005年、全国webカウンセリング協議会理事、06年同協議会理事長。ネットいじめ、不登校、ひきこもり、少年犯罪等に取り組み、全国各地で講演会や研修会を行っている。全国webカウンセリング協議会HPはこちら

 夫婦であっても、四六時中一緒にいれば、欠点が気になってイラっとしたりしますよね。子どもも同じで、毎日ずっとLINEでつながっていれば、些細なことでイライラしてきます。また、相手の顔が見えない文字だけの会話ですから、行き違いが起きやすい。

 たとえば、髪型を変えたことを「かわいくない?(かわいいね、という意味)」と書きたかったのに、「?」を付け忘れて送ってしまえば、相手には「かわいくない」という否定のニュアンスで伝わってしまう。また、落ち込んでいる友達を元気づけたくて、冗談めいたスタンプを送ったら、「バカにされた」と受け取られたり、文末に「笑」の1文字を付け忘れたために、冗談のはずが悪意と受け取られた、などのミスがしょっちゅう起きるのです。

 また、体に与える影響も大きい。ブルーライトをずっと見ているわけですから、精神不安定になりがちだし、不眠となり、「眠れないから余計にLINEをやる」という悪循環が生まれます。

 こうして生活リズムが崩れたうえに、コミュニケーションのトラブルからいじめが始まるというケースが非常に増えるのが、夏休みなのです。