国民皆保険のラストリゾートである「国民健康保険」は加入者世帯の20%が保険料を滞納している。なぜそうなったのか。今回の社会保障・税一体改革は、どのような処方箋を提示しているのか。その現状と政府改革案の問題点を検証する。
第8回から前回第10回まで、高齢化が進むもとでの高齢者医療制度の持続可能性に焦点を当ててきた。高齢者医療制度の財源は、現役健保からの所得移転に支えられており、高齢化が進むもとでそうした依存を極力抑制していくことが、高齢者医療制度改革の核心のはずであるが、政府・与党にはそうした視点が希薄であることを指摘した。今回は、健康保険制度のなかでも、国民健康保険(国保)に視点を移そう。
わが国は国民皆保険であるとされているものの、それを手放しで喜べる状況にはない。国民皆保険のラストリゾートである市町村の国保は、支出の約半分の財源を公費に依存しながら、加入全2071万世帯のうち20%の414万世帯が保険料滞納世帯であるなど、深刻な状況にある。考えられる背景は何だろうか。また、今回の社会保障・税一体改革はどのような処方箋を提示しているのだろうか。
国保は今や自営業者ではなく
年金受給者と被用者の制度に
わが国の健康保険制度は、1723の市町村がそれぞれ保険者となっている国保に、全国民が加入することを原則としつつ、被用者健保(組合健保、協会けんぽ、共済組合)および後期高齢者医療制度の加入者は、国保への加入から除外される仕組みとなっている(国民健康保険法第6条)。そのため、国保は、自営業者や農林漁業者のみならず、雇用形態上の理由や失業などにより被用者健保の適用とならない人の受け皿となっている。いわば、国民皆保険のラストリゾートの役割が期待されている。