
西沢和彦
2024年夏は5年に一度の年金財政検証の公表、25年はそれを踏まえた制度改正がそれぞれ予定されている。財政検証とは、年金財政のいわば定期健診である。年金財政の現状および検討されている改正案と、その論点を整理したい。

#19
2024年は公的年金の財政検証の年であり、診療報酬改定の年でもある。年金や医療制度について、持続可能な時代に即した制度への改革の議論は進むのか。年金、医療制度それぞれの焦点を取り上げ検証した。

#23
2023年は年金、医療の改革論議が本格化する。24年の財政検証を控え、年金分野では基礎年金の給付水準向上が焦点となる。医療分野では“かかりつけ医”の導入が争点となりそうだ。

「老後2000万円不足」を指摘した金融審議会報告書の骨格は妥当な内容であり、「不足額」はむしろもっと多い。正されるべきは、受給額や財政検証で楽観的すぎる年金制度の説明をしてきた政府の側だ。

第17回
6月3日、厚生労働省は、5年に一度実施される年金の「財政検証」結果を公表した。楽観的な経済前提や予定調和的な結果に批判が集まっているが、実は今回の財政検証の本丸は、財政検証本体に併せて行われた「オプション試算」にあるのだ。

第16回
衆議院で社会保障・税一体改革の審議が行われている。改革の内容は消費増税が主体で、社会保障は現行制度の修正の域を大きく出ない。それは与野党とも政策立案能力が不足しているためだ。今後もう一段の改革が必至ななか、真に政治主導の議論を進めるために何が必要となるかを考察した。

第15回
給付付き税額控除は、税制が社会保障の機能をも担う魅力的なツールである。ただ、この仕組みが実効性をあげるためには、いくつかの行政インフラの整備が欠かせない。今回は、必要とされる行政インフラとその課題を採り上げる。

第14回
「社会保障・税一体改革」において、「給付付き税額控除」は、本来なら中核的テーマに据えられるべきだ。他の低所得層対策との比較を通じて、そのメリットを検証してみよう。

第13回
消費税を地方税として拡大せよという要求が高まっている。だが、日本の消費税は地域主権のための財源には適さない。最大の理由は、消費税が多段階課税となっているためだ。それによりに発生する3つの大きな難点がある。

第12回
消費税率を引き上げると、医療機関の経営が打撃を受けるというパラドックスが生じる。それは、現行の消費税制において、医療機関に仕入税額控除が認められていないためだ。これを防ぐには医療サービスを課税取引とし、医療機関に仕入税額控除を認めることである。

第11回
国民皆保険のラストリゾートである「国民健康保険」は加入者世帯の20%が保険料を滞納している。なぜそうなったのか。今回の社会保障・税一体改革は、どのような処方箋を提示しているのか。その現状と政府改革案の問題点を突く。

第10回
2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」には、健康保険制度に関して聞き慣れない「総報酬割の導入」という文言が盛り込まれている。この言葉の背後には、国民負担の増加=実質増税の意図が隠されている。

第9回
収入が同じ場合、後期高齢者よりも現役世代の方が健康保険料の負担は重い。この不公平の是正は世代間の公平性を確保するためにも必要なのだが、「社会保障・税一体改革大綱」は、負担をどう分かち合っていくかに関して、真正面から向き合っていない。

第8回
今回から、社会保障のうち医療を論じる。医療に関して、今通常国会において最大の争点の1つとなるのが、後期高齢者医療制度の廃止法案である。だが、同制度は高齢者をとりたてて差別しておらず、本当に「差別」されているのはむしろ現役世代なのである。

第7回
今通常国会の最大の焦点である「社会保障・税一体改革」。政府の「素案」を検証すると、主眼は消費税率10%への引き上げであり、社会保障改革は、もっぱらそのためのアメ、あるいは、増税色を薄めるための中和剤に過ぎない。

第6回
今回の社会保障・税一体改革は年金制度改革に関し、2段階の工程が想定されている。第2段階は、全く新たな年金制度の創設である。政府・与党の念頭にあるのはスウェーデン型の年金制度と見えるが、そのまま日本に移入するには大きな障害が立ちはだかっている。

第5回
消費増税と並ぶ社会保障・税一体改革の目玉は、低所得者への年金加算である。一見すると改善にみえる低所得者加算は、公平性を著しく損う、保険料納付意欲を削ぐといった年金制度の根幹を揺るがしかねない問題をはらんでいる。

第4回
2004年改革で導入された「マクロ経済スライド」の狙いは、年金給付の抑制にあった。だが、デフレが続くもと、全く機能していない。世代間の公平を確保するためにも、このようなわかりにくい手法を用いず、給付抑制について正面から議論すべきである。

第3回
2004年の年金改革は、時の政権与党が「100年安心」を掲げ実施した。しかし、100年安心とはそもそもどういうことか。それを考えるには、長期的な時間軸を視野に入れて年金財政を考えることが重要である。今回は100年安心の実態を明らかにする。

第2回
年金が抱える問題の多くは基礎年金の舞台裏を知ればよくわかる。中でも、基礎年金拠出金のからくりを理解することが重要だ。拠出金は受給と負担はどうあるべきか、公平性はどうあるべきかという問題を提起している。
