2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」には、健康保険制度に関して聞き慣れない「総報酬割の導入」という文言が盛り込まれている。この言葉の背後には、国民負担の増加=実質増税の意図が隠されている。

「社会保障・税一体改革大綱」(2012年2月17日閣議決定)に基づき、政府・与党のスケジュール通りであれば、今月中にも消費増税関連法案が提出される。その「大綱」には、健康保険制度に関して聞き慣れない「総報酬割の導入」という文言が盛り込まれている。

 もし、総報酬割が導入されるとどうなるか。組合健保および共済組合加入者にとって、実は復興増税における所得税の増税規模(年3000億円、25年計7.5兆円)をも上回る健康保険料の負担増となる可能性がある。

 復興増税のスキーム策定の際には、収入階級別の家計の負担額が試算された上、毎年度の負担平準化を図るため、増税期間が当初案の10年から25年に延長されるなど、与野党の政治家や国民の関心も高く、具体的な議論が展開された。

 それに対し、「総報酬割の導入」に関しては、それを上回る規模と目されながら、国民に分かりやすい議論が展開されているようには見受けられない。健康保険料も、国民負担である点において税と同じである。にもかかわらず、今回の進め方は国民に真の狙いを開示しない、隠れた実質増税とみなされても仕方がない。

健康保険制度における
総報酬割とは何か

 そもそも「総報酬割」とは何だろうか。まずは、健康保険制度の概要と高齢者医療制度について述べた第8回の解説をおさらいしておこう。