後者の経済成長の実現性はどうだろうか。そもそも、経済全体を伸ばすというのは非常に難しい。一企業の新商品がヒットし、「経済効果○億円!」などと大々的に報じられることがあるが、これはその裏で起こっている現象が考慮されていない。

 たとえば、自動車業界でヒット商品が出れば、競合企業の売上は少なからずダメージを受けるうえ、車を購入した当事者が、他の消費行動を抑えることもあるだろう。前述した大型スーパーも同じだ。新たにスーパーが出店されたからといって、人は1日6食食べるわけではなく、洗濯機を2つ持つわけでもない。

 個人消費の金額のパイは概ね決まっており、それを各企業が必死に取り合うという構図を俯瞰して見ると、当面の人口減少が確定している中で、経済を伸ばすというのは簡単なことではない。

経済成長ではなく生活コストの抑制を

 もちろん、筆者は経済がどうなってもいいとは考えていない。現在、特に地方において、所得を上げようという機運があるが、それは否定しない。しかし、それ以上に注力すべきは生活コストの削減ではないかと思う。具体的には衣食住費や光熱費、教育費、医療費、電話やネットなどの通信費などである。

 手取り収入が3万円上がることも、個人の生活コストが3万円下がることも、損益という観点からは同じ結果を生む。さらに特筆すべきは、生活コストを抑えるメリットは労働者だけではなく、子どもや高齢者、そして、当然ながら地方を含めた国民全体が享受する点からも、広く効果が見込まれる。

 現在、年金支給の開始が68歳になる案も浮上している。もし、生活コストを抑えることができれば、今後、社会保障制度にメスを入れたとしても、生活に与える影響は限定される。さらには、ベーシックインカムに必要な財源の閾値を下げ、導入をより容易にするなど、新しい仕組みや政策の幅を広げる可能性も期待できる。

規制緩和が地方のセーフティーネットを持続可能にする

『限界費用ゼロ社会(ジェレミー・リフキン著、NHK出版)』にあるように、資本主義社会が続く限り、長期的には多くのサービス価格は下降していく。しかし、独占状態にあったり、規制の強い業界はその限りではない。特に食料や医療、交通インフラなどは安心、安全な状態を担保するといった理由から、特定の利害関係者が守られていることが多い。