法廷に立つだけが仕事ではない
需要と供給のミスマッチがある

――川村さんは「法廷に立たない弁護士が日本にもっと居ていいはずだ」と発言されている。どういうことか。

 アメリカには約120万人の弁護士がいて、アメリカを訴訟社会にしていると言われる。しかし、これは違う。アメリカには「マーティンデール・ハベル」という弁護士名艦があるが、この120万人のなかで、自分を訴訟弁護士だと登録している人はわずか16万人しかいない。他は、ローファームで企業法務を扱ったり、企業や政府などのインハウスをしている「法廷に立たない弁護士」だ。

 イギリスでも同じだ。約14万人の弁護士がいるが、バリスタ(法廷弁護士)は1万人以下だ。多くの国で、法廷に立つ弁護士はむしろ少数派であることがほとんだ。訴訟というのは、弁護士の業務の中でも更に専門性の求められる特別な分野なのだ。それなのに、日本では司法制度改革後も、弁護士を全員、裁判の専門家にしようとしており、異質感を拭えない。

 企業はどんどん海外へ進出し、M&Aや業務提携など、国境を超えて法律のプロフェッションが担うべき役割が増えている。人の交流も増えている。そのニーズに対して、供給制度である司法試験や養成制度が合っておらず、需要と供給のミスマッチが起こっている。

業界のひずみの原因は
教育のミスマッチにあり

――そもそも、司法試験合格者を3000人にする、という大方針について、どう思うか。

 例えば、大学が就職あっせん可能な人数だけ学生を入学させるというのは合理的だろうか?医師免許などはどうなっているのだろう?

 弁護士業界への新規参入を数で制限することには独禁法上の問題がありえる。司法試験で弁護士としての一定の“質”が担保されれば、業界に参入した弁護士達は、社会のニーズに合わせて自分のキャリアを発展させる自由が保障されてもいいのではないだろうか。

――この10年の弁護士人数増加政策は正しいのか。就職難や司法試験合格後に弁護士登録さえしない人もいる。人数の増加によってひずみが出ているのは明らかだ。