被ばくレベルは低いが
10年単位での警戒が必要

――大きな心配はしなくてよいということか。

 福島県民の多くがとても慎重に食材を選んでいることと、日本は流通網が発達していてチェック機能が働いているため、汚染された食材が出回らないようになっていることが良かったのだと思う。

 ただ、チェルノブイリでは、食物による内部被ばくのピークは事故後10年も経ってからだった。セシウムは水や風に乗って地域を循環する。これからも気を抜かずに計測し、汚染された食材が出回らないようにすることが重要だ。また、福島の食材が東京などに運ばれることもあるだろうから、福島県以外の都道府県も気を抜くべきではない。

 また、被ばくと健康被害の関係については、まだ分からないことも多い。明らかに関係があると医学的に立証されているのは甲状腺がんのみだ。国は基準値作りに腐心しているが、医師の立場から見れば、一律に基準値を作ることはあまり意味がなく、家族病歴などに応じた、1人ひとりのオーダーメイドのカウンセリングが必要だ。

 たとえば、高血圧の症状がある患者さんで、家系にはあまりがん患者がおらず、年齢も高齢であれば、僕は「被ばくを気にしすぎずに好きなものを食べて、散歩しなさい。ただし、食材はよく洗ってね」と指導する。年齢が若かったり、家族にがん患者が多数いるなら、また違った指導になる。