民間業者に蓄えられる能力が
生活保護制度を破壊するか

 さらにAさんが懸念しているのは、現実化する可能性の高さだ。

「生活困窮者自立支援法が全面的に施行されて、満3年が経過しました。相談支援を委託された業者が、非常に力を蓄えてきています。この流れが続くと、『行政よりも質が高い』という評価が定着するのではないでしょうか」(Aさん)

 2013年、最初の生活保護法改正と同時に成立した生活困窮者自立支援法は、経済的困窮を含む多様な困りごとを抱えた人々に対する相談支援を中心としている。相談支援機関は、行政が直営している場合と外部委託が半々程度だ。好評の相談支援機関は、必ずしも外部委託とは限らず、行政直営の場合もある。

 生活困窮者自立支援法に基く相談支援の対象は、現在のところは生活保護に至っていない人々だ。風俗業界で働いており収入の面では生活困窮状態ではない女性が、多重債務やDV被害など数多くの問題を抱え、苦しみながら子どもを育てているのかもしれない。頭脳優秀で高い職業能力を持つものの、本人が気づいていない軽度精神障害のために、就労が不安定なのかもしれない。

 ともあれ、相談支援を委託されている業者には、数多くの困難ケースを含めて、経験が蓄積されてきている。3~5年でローテーションによって現場を去る公務員よりも優秀なスタッフが、育つ可能性もあるだろう。すると生活保護業務の外部委託も、机上の空論ではなく現実の可能性となってくる。しかも人件費が削減される。住民としては、歓迎すべきことばかりに見える。

「でも、そんなに良い形にはならないだろうと思います」と、Aさんは懸念する。