現在の情勢を判断すると、北朝鮮が核を放棄することには疑問符が付く。将来も、核兵器の保有こそが金王朝の存続を支える基礎となるだろう。北朝鮮問題の実態は変わっていないかもしれない。

 これまでも北朝鮮は自国の状況が窮すると、中国に恭順の意を示し、韓国には「ほほえみ外交」を仕掛け、米国には対話を求める。これが北朝鮮外交の常套手段だ。2000年、2007年と北朝鮮は韓国と首脳会談を開き、南北朝鮮の融和、北朝鮮発展に向けた支援などを協議してきた。また、金日成、金正日、現在の金正恩体制下で核の放棄、あるいは実験中断などが発表されてきたが、いずれも破棄された。

 これまでと異なるのは、金正恩委員長が“中国の警告”を真剣にとらえたことだ。中国は、同委員長の暴走に痺れを切らし、“金王朝崩壊後の北朝鮮”を視野に入れ始めたとの指摘もある。加えて、米国は韓国への報復攻撃を回避しながら北朝鮮への先制攻撃を行うことも可能と表明してきた。金委員長は米・中の圧力を真剣に受け止めざるを得なくなった。そのため、表向きの態度を融和的なものに変えたとも考えられる。南北首脳会談はそれをアピールする場だった。

 注目されるのは、板門店宣言に“核のない朝鮮半島”との文言が含まれていることだ。額面通りとらえると、北朝鮮は在韓米軍の完全撤退を求めていると解釈できる。それに加え、米朝首脳会談で北朝鮮は、制裁の解除、金独裁体制下での北朝鮮の経済発展への支援、体制維持への保障なども要求するだろう。板門店宣言の内容が実現するためには、米国の譲歩が必要だ。

 一方、米国にとって譲れないのは、完全に北朝鮮が核を放棄し、その検証を行うことである。今回の宣言内容が、米朝の交渉、今後の北朝鮮問題への対応を一段と難しくする恐れすらある。

 米朝首脳会談がどのように進むかは見通しづらいが、現在の状況の中で米朝が歩み寄り、核の放棄と金体制下での開発支援が合意されることは難しいだろう。成果がないのであれば、会談中にトランプ大統領が席を立つかもしれないと報じられているのはそのためだ。