長期での雇用を前提として、年間数百人単位で採用される新卒者は、年次管理のもと育成され、長い時間をかけて徐々にその組織に適応していく。職種別採用ではないものの、頻繁に異動させない人事制度のおかげで、専門性が育つという。

「人材の育成の面では、結果的に縦に育てられているので、専門家になっているわけです」(同)

 この様に、日本的雇用システムそのものであるC社だが、それは日本国内だけの話で、冒頭あるように、海外のマネジメントは現地に任せるという姿勢を貫いている。人事制度面で日本的なものを強要することは一切ない。

「行動基準を作った時がいい例ですが、ゼネラルな方針だけ出して、後は各自で考えてもらう。現場の発想は、人事制度の中身が全然異なりますね。アメリカは日本の尺度では評価できませんし。日本以外の他の国で職能資格制度を入れる発想はありませんから」(同)

 “ゼネラルな方針だけ”が顕著に表れているのが、同社のウェイマネジメントだ。先達が築きあげてきた同社を支える価値観、心構え、そして行動様式をウェイとしてまとめ全世界の全社員で共有することを目指しているが、決して強制するものではないという。

「自分の頭で考えて理解し、良いと思うことを実行しなさいということです。その前提にあるのは社員の人格を尊重するという姿勢です」(同)

 人格を尊重する姿勢は、同社のグローバル施策にも色濃く表れている。

「グローバリゼーションは日本人のグローバリゼーションではない。みんながどうやって一緒に働けるかのグローバリゼーション。同じチャンスを与える、フェアにやらなければいけない。そうでなければ長く働いてくれない」(同)

 C社のグローバルマネジメントから言えることは、日本人も外国人もなく、C社人として一緒に働く同僚、仲間である。そしてその仲間たちと長く働き続けることを望めば、特別な制度や運用は必要なく、シンプルかつフェアにマネジメントすることが重要であるといえよう。

 C社では、HQである国内は、日本的な雇用システムで運用されているが、海外の現地法人は現地の雇用慣行に準拠しており、人事という観点でのコントロールはほとんど行っていない。日本的な雇用慣行を維持しつつ、雇用のグローバル化も実現できているようだ。

グローバル先進企業に共通の要件
制度を超える大事な構造

 A社、B社、C社を見ると三者三様で、一見、共通点を見出しづらい。しかし実は二つの大きな共通点がある。

 一つ目は、グローバルで守るべきルールがシンプルで可視化されていることだ。

 A社においては、専門性に立脚した業績と価値観ですべてを計ることが基本ルールとなっており、これはグローバル共通である。B社においては業績のボトムラインを守ることが、グローバル共通のルールだ。C社においてもウェイと名づけた行動規範がルールで、遵守ではなく共有することを目標としている。3社ともグローバルに守るべきルールをとてもシンプルなものにしている。そのシンプルさともあいまって、それらルールは可視化されており大変わかりやすいものになっているのだ。