そこで国は、薬価を引き下げ、薬では利益がでない仕組みに変更。同時に、院内処方するよりも、処方せんを書いて調剤薬局に回したほうが医療機関の利益になるように診療報酬を改定して誘導を図ったのだ。

 診療報酬改定のたびに薬価は引き下げられ、今では薬価差益はほとんどなくなっている。薬の在庫は医療機関の資産とみなされて資産課税の対象になる。薬価差益で稼げればいいが、その旨味が減った今、医療機関も薬の在庫は抱えたくない。薬の在庫を減らせれば、税金面でのメリットだけではなく保管場所や人件費などのコストカットもできるため、1995年度に20%だった医薬分業は2010年度には63.1%まで広がっている。

 この流れの中で、調剤報酬は現在のようなルールが出来上がったわけだ。専門職である薬剤師の技術料として、適切な報酬が支払われるのは当然のことだが、受診した医療機関が「院内処方」か「院外処方」といったことで、医療費に差がつくのは患者としては納得しかねるものもある。医薬分業がさらに進めば、こうした制度は改められるはずだが、今後は公平性が担保された分かりやすい制度に改正されることを期待したい。

 医薬分業の目的は、薬の専門職である薬剤師が重複投薬をなくしたり、飲み残しの原因を探ったりして、患者の健康被害を防ぎ、医療費の無駄遣いを減らすことにある。ところが、特定のクリニックの前にある門前薬局などでは、単に医師の処方せん通りに薬を揃えているだけのところがあることも否定はできない。在宅での飲み残しの医薬品は年間400億円に上ると推計されるなど、薬剤師の力が最大限に発揮されているとは言えないだろう。

 こうした無駄を省くためには、患者の生活環境に踏み込んだ服薬指導ができる薬剤師の存在が必要だ。昨年の東日本大震災では、医師が指示した医薬品が不足する中で、薬剤師が代替えの医薬品や市販薬への切り替えを提案するなど、専門職としての存在感を示す活躍ぶりも伝えられている。

 意識の高い薬剤師なら、ジェネリック医薬品の品質や価格などにも詳しく、家計に無理のない薬を処方する相談にものってくれる。賢く安全に薬を使うためには専門家の知恵は不可欠だ。日頃から薬や健康のことを相談できる「かかりつけ薬局」を作って健康管理に役立てたいものだ。