同じ会社に勤めるAさんとBさんは、連日の忘年会で飲み過ぎの日が続いていた。ついには2人とも胃痙攣を起こし、同じ日の夜中に七転八倒の苦しみを味わった。
Aさんは、翌日の午前中に会社を半休して、会社の近くにあるかかりつけクリニックを受診した。一方、Bさんは痛みに耐えながらも出勤。1日我慢したが、一向によくならないため、その日の深夜に自宅近くの大学病院を受診した。
診療内容はふたりとも全く同じで、医師の問診を受けて薬の処方せんを書いてもらうというものだったが、Aさんが窓口で支払った医療費の自己負担額は1010円。一方、Bさんは7700円。診療内容は同じなのに、Bさんの自己負担額のほうがAさんよりも6690円も高かったのだ。
AさんとBさんの違いは、「受診した時間」と「受診した医療機関」だが、ここにはどのような医療費の仕組みが隠されているのだろうか。
時間外、深夜、休日に受診すると
初診料には特別料金が加算される
日本の医療費は、国が価格を決める公定価格制だ。病院や診療所で行われる診察、検査、処置、手術などの医療行為は、ひとつひとつ国が価格を決めており、この価格を「診療報酬」という。診療報酬は点数で表示されており、1点あたり10円をかけたものが実際の医療費なる。
たとえば、外来での静脈注射30点(300円)、点滴(500ml以上)95点(950円)などと決められている。そして、実際に行った診療行為の点数を積み上げ、その合計がその患者が使った医療費の総額になる。患者はこのうちの3割(70歳未満の場合)を窓口で自己負担し、残りの7割についてはその人が加入する健康保険に医療機関が請求する仕組みになっている。
診療報酬のひとつである初診料は、その病気で初めて医療機関を受診したときにかかる診察料で、その中には問診、触診などの基本的な診察に加えて、血圧測定、聴診器による簡単な循環器の測定などの医療行為が含まれている。